News Release

解明:キノコを栽培するシロアリが侵入者から畑を守る方法

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

一部のシロアリは、菌類(キノコ)と共生関係を築いている。新しい研究によると、菌類を栽培するシロアリは、大事に育てた作物に有害な菌類が侵入すると、熟練の庭師のように正確な反撃を開始し、有害な菌類に土の塊を覆いかぶせる。その土の塊には、菌類の増殖を抑制してくれる協力者である微生物が含まれているという。菌類を栽培するシロアリ(Odontotermes obesusなど)は、オオシロアリタケ属(Termitomyces)の菌類と重要な共生関係を保っており、菌園という特殊な培養室で菌類を栽培している。菌園は、シロアリにとって確実な食料源であるとともに、菌類にとって理想的な生息環境でもある。しかし、栄養豊富な菌園は雑草性の侵入菌類(特に、成長の早いPseudoxylaria亜属の菌類)をも引き寄せてしまい、放置すると、あっという間に作物を凌駕しかねない。Pseudoxylariaは通常、シロアリが世話をしている健康な菌園では抑制されているが、シロアリを取り除くとすぐにはびこることから、シロアリの活動が菌園を維持するうえで重要な役割を果たしていることが示唆される。シロアリは微生物を利用して雑草性菌類を駆除していると考えられているが、栽培している作物には害が及ばないようにしながら、そうした選択的な制御を実現する正確な行動メカニズムは、いまだによく分かっていない。Aanchal Panchalらの研究チームは、シロアリ(O. obesus)をさまざまな深刻度のPseudoxylaria発生にさらす実験を行った。その結果、シロアリが、侵入の深刻度に応じて戦術を調整しながら雑草性菌類を抑制するという、柔軟な行動をとることを見出した。

 

小規模な感染の場合、シロアリは汚染された菌園から積極的にPseudoxylariaを取り除き、それを土の塊(土粒)で覆い隠す。これにより、有害な菌類は酸素の乏しい土壌環境に効率的に隔離され、さらなる増殖は抑制される。一方、深刻な感染の場合、シロアリは感染部分を健康な菌園から完全に隔離し、必要であれば、その部分全体を土粒で覆って脅威を封じ込める。特筆すべきことに、シロアリが使用する土粒は単なる防壁ではなく、菌類の増殖を抑えるシロアリ由来の細菌をはじめとする、多様な微生物群集を含んでいることを、著者らは見出した。シロアリは、雑草性菌類が彼らの菌園を脅かすときにのみ、菌類の増殖を抑える土粒を使用し、健康な菌園に対しては使わない。Panchalらによると、これはO. obesusが非常に的を絞った防御戦略を進化させており、協力者である微生物を動員して有害な菌類のみと選択的に戦う一方で、有益な作物には害が及ばないようにしていることを示しているという。関連するPerspectiveでは、Aryel GoesとRachelle Adamsが、「Panchalらの研究結果によって、多角的な有害生物管理戦略の一環として、共生微生物を利用できることが明らかになった」と述べている。「関与している分子と、宿主の適応度との関係を理解すべく取り組めば、医学、農業、バイオレメディエーション(生物学的環境修復)に役立つ天然物の発見につながるような、有益な微生物が見つかるであろう」


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