News Release

細胞間シグナル伝達がホヤ胚発生の不変性を促進する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

短距離細胞シグナル伝達は、ホヤ類(脊椎動物と近縁関係にある海洋無脊椎動物)の発生における極端なタイプの細胞再現性の維持に重要である。生きているホヤ類の胚の個々の細胞を評価する新しい方法を用いて、研究者が、細胞と細胞が接触する正確な領域が、不変の胚細胞系統の誘導に必要であることを明らかにした。このことは、細胞シグナル伝達イベントの範囲が胚発生の再現性の限界を設定しており、動物界全体で観察される可変性を説明するうえで役立つ可能性があることを示唆している。ほとんどの動物種では、初期胚発生は厳密に再現可能な細胞プログラムをたどり、これにより、複雑な生物の重要な組織と器官が正確に設計されることが保証されている。生物内の細胞数が増加し、それらの挙動がよりランダムになっていくため、ほとんどの種では可変性であり、高度に統制された細胞運命が、胚発生中最初の数回の細胞分裂を超えて持続することはほとんどない。しかしホヤ類では、この再現性が発生後期にも維持される。さらに、ホヤ類が約4億年前に出現してからほとんど変化していないままであり、遠縁のホヤの種間でも変化していない。ホヤ類の胚発生は進化的に独自に保存されているため、細胞の再現性を維持し制約するまだわかっていない機構を検討するための貴重なモデルとなっている。Léo Guignardらは、ライトシート顕微鏡とASTECと呼ばれる自動化画像処理アルゴリズムを組み合わせた新しい方法を用いて、胚発生の重要な段階におけるホヤ類の胚10個の発生を2分ごとに記録した。胚発生中の細胞の長期追跡は困難なことが分かっているが、新しい方法ではGuignardらがデジタル版の各細胞を作成し、胚全体の個々の細胞の包括的かつ動的な細胞系列のアトラス、位置、挙動を記録した。この知見から細胞誘導と相同細胞の配置の密接な関係が明らかになった。以後の実験的モデリングと操作により、シグナル伝達を行う細胞と反応する細胞の間の接触が細胞のコミュニケーションに重要であることが示唆された。このことは、細胞シグナル伝達の範囲が、胚の再現性を維持する尺度を設定する限定因子である可能性を示している。

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