News Release

医薬品開発を加速する新型アラインの発生法を開発

炭素−炭素結合の切断を経たγ-アリール-β-ケトエステル類の簡便合成に成功!

Peer-Reviewed Publication

_Tokyo Medical and Dental University

A Synthetic Method

image: The Mukaiyama aldol reaction of 6-(triflyloxy)benzocyclobutenones with ketene silyl acetals and subsequent generation of γ-aryl-β-ketoester-type arynes from resulting 6-(triflyloxy)benzocyclobutenols in the presence of arynophiles efficiently provided a wide range of γ-aryl-β-ketoesters. The method was applicable to the synthesis of an analog of ALK inhibitor. view more 

Credit: Department of Chemical Bioscience,TMDU

 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 生命有機化学分野の細谷孝充 教授、吉田 優 准教授、内田圭祐氏(博士課程学生、日本学術振興会特別研究員)、南 安規プロジェクト准教授の研究グループは、炭素−炭素結合を切断することによりγ-アリール-β-ケトエステル型のアラインを発生させる手法の開発に成功しました。発生させたアラインを様々な反応相手と反応させることにより、多彩な縮環化合物の合成に重要なγ-アリール-β-ケトエステル類を効率的に合成できることを明らかにしました。さらに、本手法を応用することで、抗がん剤であるalectinibの類縁体の合成にも成功しました。本手法によって、従来法では困難であった多置換縮環型化合物を合成できるようになるため、医薬品の開発などに広く役立つと期待されます。この研究は、文部科学省科学研究費補助金ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業等の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、2019年10月24日に、アメリカ化学会の有機化学専門誌Organic Lettersのオンライン版で発表されました。

【研究の背景】  

γ-アリール-β-ケトエステル類は、抗がん剤alectinibをはじめとする、様々な縮環化合物の合成中間体として重要な化合物群ですが、その合成は容易ではありません。とくに、医薬品開発などにおける構造相関の研究において、さまざまな置換基を有するγ-アリール-β-ケトエステル類を簡便に合成できる新しい方法論が強く求められています。

【研究成果の概要】  

本研究グループは、γ-アリール-β-ケトエステル型のアラインを発生させる手法の確立に成功し、本手法を利用することで多様性に富んだγ-アリール-β-ケトエステル類を合成できることに成功しました。本研究の中核をなすγ-アリール-β-ケトエステル型のアライン中間体の発生は、ベンゾシクロブテノン類を用いた向山アルドール反応によるアライン前駆体の効率的な合成と、それに炭酸カリウムといった弱い塩基を作用させることによる炭素−炭素結合の切断を経たアライン発生法を組み合わせることで実現できました。

【研究成果の意義】  

本研究で新たに開発された本手法を応用することで、抗がん剤であるalectinibの類縁体も効率的に合成できることから、今後、医薬品の開発などに広く役立つことが期待されます。

【用語説明】

*1γ-アリール-β-ケトエステル類  γ位にベンゼン環、β位にカルボニル基を有するエステル化合物。これらの化合物をさらに誘導することで、抗がん剤alectinibなどの幅広い縮環型化合物を合成できる。

*2向山アルドール反応

 故向山光昭 東大名誉教授らによって開発された反応。Lewis酸触媒を用いて、ケトンなどのカルボニル化合物とシリルエノールエーテルやケテンシリルアセタールを反応させ、β-ヒドロキシカルボニル化合物を合成する手法である。代表的な炭素−炭素結合形成反応であり、反応条件が穏和であることから、複雑な構造の有機化合物の合成などに広く利用されている。

*3アライン  

ベンゼン環の一部が三重結合になった短寿命化学種。「ベンザイン」とも呼ばれ、幅広いベンゼン類の合成に役立つ中間体として利用されている。

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