News Release

ヒトは二足歩行と引き替えに下肢虚血のリスクを負った

マウスとヒトの側副血行路を三次元画像で詳細に比較

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

マイクロX線CTで撮影したマウス下肢欠陥の三次元画像

video: マウス左下肢を虚血状態にして1ヶ月後に撮影。右下肢と比べて、左足では側副血行路と呼ばれる迂回路として機能する複数の血管が形成されている。 view more 

Credit: Dr. Yuichiro Arima

動脈硬化によって血管が狭窄し、脚に流れる血管が詰まりやすくなってしまうのが末梢閉塞性動脈疾患です。下肢の血流障害をきたすため、歩行時に痛みやしびれの出る歩行障害(間欠性跛行(かんけつせいはこう))や、重症化した場合は下肢切断などの原因にもなります。

これまでの臨床研究と動物実験の結果から、ヒトに比べてマウスの方が下肢の虚血状態による組織障害が少ないことが知られていましたが、どのような違いが原因なのかは明らかでありませんでした。そこで、研究者らは、閉塞血管の迂回路として機能する側副血行路の発達に注目し、下肢の血管が詰まった状態を再現したマウス(下肢虚血モデル)と末梢閉塞性動脈疾患患者さんの下肢血管の形状を比較しました。

小さなマウスの血管を見るにはX線などの手法がありますが、いずれも二次元画像です。より詳細に観察するため、工学系の研究者らと医学系の研究者ら共同研究を行い、マイクロX線CTを用いて立体的に可視化する手法を確立しました。この手法ではマウスの血管が骨のどの部分を回り込んで走っているか、詳細がわかります。

この手法で研究したところ、マウスの下肢が虚血した状態では臀部を走行する下臀動脈と呼ばれる血管が拡張し、側副血行路としての機能を示すことを明らかにしました。一方で、末梢閉塞性動脈疾患の患者さんでも、診断画像の詳細な解析により、下臀動脈が血管狭窄に反応して拡張していることを確認しました。

さらに、マウスの下臀動脈はもともと下腿(ふくらはぎ)領域まで血管が発達していることで、ヒトと比べて下肢虚血に対して強い構造になっていることが示されました。一方、ヒトの下臀動脈は臀部の下あたりまでしか発達していません。

研究を主導した有馬特任助教は次のようにコメントしています。

「ヒトで下臀動脈の発達が阻害されている原因として、二足歩行に伴う骨格の変化により、下臀動脈の発達する領域が制限されていること、骨盤から下腿までの距離が遠くなってしまったことが考えられます。つまり、ヒトは進化により下肢虚血のリスクを抱えてしまうことになったのです。今後はこの特徴を理解した上で、ヒトにおける側副血行路を強化する治療法の開発が期待されます。」

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本研究成果は、科学ジャーナル「Journal of the American Heart Association」に平成30年3月23日掲載されました。

[Source]

Arima, Y., Hokimoto, S., Tabata, N., Nakagawa, O., Oshima, A., Matsumoto, Y., … Tsujita, K. (2018). Evaluation of Collateral Source Characteristics With 3‐Dimensional Analysis Using Micro–X‐Ray Computed Tomography. Journal of the American Heart Association, 7(6), e007800. doi:10.1161/jaha.117.007800


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