2つの研究チームが、極めて一般的なタイプの血管異常である静脈奇形を一部の患者で引き起こし得る、良く知られたがん遺伝子の変異を発見した。これらの結果は、この血管疾患の治療のために、PIK3CAとして知られる遺伝子を標的として開発されているがん治療をリパーパスする道を拓くものである。静脈奇形の患者は、異常に太く変形した血管を有して生まれ、こうした血管が時間と共に成長する。これらの痛みを伴い変形をきたした病変は、出血を引き起こしたり、腸、筋肉、関節などの器官を閉塞させたりすることがある。手術や硬化療法といった現在の治療法は、部分的な効果しかもたらさない。TEKという遺伝子の変異が、非遺伝性の静脈奇形の約半数の原因であることが知られているが、他の半数の症例の原因となる遺伝子変異は明らかにされていない。Sandra CastilloらとPau Castelらは今回、静脈奇形患者の25%でPIK3CA変異があり、これらの患者には思いがけずTEK変異が認められないことを発見した。細胞の成長および生存の重要な調節因子であるPI3K経路は、多くのがんや過成長症候群を引き起こすことで知られている。事実、Castelらはそもそも子宮癌におけるこの経路の役割を研究していたところ、Pik3ca変異を有するマウスが、静脈奇形とよく似た血管障害をきたしたことに気付いた。実際、CastilloらがデザインしたPik3ca活性化変異を有するマウスは、マウスの胎仔発生時も含め、ヒト疾患に類似した疾患も示す。両研究チームは、この変異が血管内皮細胞を無秩序に増殖させ、異常なクラスターと不良な血管を形成させることを発見した。Castilloらが試した局所製剤を含め、PI3K阻害剤をこのマウスに投与したところ、血管の過成長が抑えられた。これらの結果を全て合わせると、PI3Kを阻害する癌治療薬をリパーパスすることで、静脈奇形患者に対する治療薬がもたらされる可能性が示唆される。
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Journal
Science Translational Medicine