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植物プランクトンの増加が北極海の一次生産を促進する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

この10年間で北極海の一次生産が増えたのは、海氷の消失よりむしろ植物プランクトの増加によるもので、このことは比較的栄養に乏しい北極圏の海水に栄養が新たに流入したことを示唆すると研究者らは報告している。この結果によって、北極海(AO)が将来、無機炭素をより生産的・より効率的に深海に輸送できるようになる可能性が示された。北極圏ではここ数十年の海氷の激減と海水温の上昇によってAOの植物プランクトンが激増したことで、北極圏全域で一次生産(PP)の増加が見られるようになった。しかし気候変動が引き続き北極圏のPPにどのような影響を与えるかについては、議論が行われている。北極圏の温暖化に伴う淡水の流入増加で北極海表面の成層が強化されて植物プランクトンには必須の深海の栄養の混合が阻まれ、よってPP能力が抑制されるという意見がある。逆に、海氷融解がさらに拡大し、嵐の頻度も上がることで、鉛直混合が活発になるとともに他の海域から北極海へと栄養が新たに流入し、それによってPPが促進されるという見方もある。宇宙から観測できる海水の色はプランクトンの生物量の推測に使用できる。Kate Lewisらは今回、海色アルゴリズムを用いてAOの衛星画像を分析し、過去20年間にわたる北極圏のPPに対する気候変動の影響を評価した。彼らは北極圏のPPが1998年から2018年で57%増加したことを示した。これはこれまでの推測をはるかに上回る数値である。さらに、このうち最初の10年間のPP増加は主に海氷の消失によるものであったことを確認した。しかし驚いたことに、それに続く10年間で観測された増加は代わってプランクトン生物量の増加によるものであった。このことはAOの一部地域 ―― 全域とは限らない ―― に新たな栄養の流入があったことを示唆している。関係するPerspectiveではMarcel Babinがこの研究の結果とそれが提起するさらなる疑問について論じている。「この件については今後、さらに長期にわたる調査で栄養素濃度をコントロールする物理現象の理解を深めなければならない」とBabinは書いている。

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