News Release

特集号、「山の生物」、アレクサンダー・フォン・フンボルトの永遠の遺産を称賛

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

アレクサンダー・フォン・フンボルトは250年前の9月に生まれ、生涯の大半を地球の山岳地帯の研究に費やした。その間、科学と様々な人間の体験との繋がりの仕組みに関する彼の思想は現代科学の基礎の確立に幅広く役立ってきた。今週のScienceのSpecial Issueでは、Editorial、Perspective、Review、Policy Forumで特に山岳地帯の生態系および環境問題についてフォン・フンボルトが遺した長く引き継がれる思想が取り上げられている。これらの記事ではまた、私たち人類が人新世に直面している社会問題により上手く対処するためにフンボルトの思想がどう役立つかについても述べられている。

山岳地帯の面積は地球の25%だが、地球の両生動物の85%以上がそこに暮らしている。1本目のReviewでCarsten Rahbekらが書いているように、このような種の豊富さの理由は解明されていない。Rahbekらはこれを「フンボルトの謎」と呼び、この謎の解明を試みようと世界の山岳地帯の生態系に注目した研究の概要を述べている。Rahbekらによると、山岳地帯に種の多様性が生じ、維持される上で、気候と山岳地帯の険しい地勢との複雑な相互関係が重要な役割を果たすと考えられると言う。しかし、山岳環境で世界的に気候が変動し、また人間による土地利用も増加すると、生物多様性の退避地としての山岳地帯の長い歴史は脅かされる可能性がある。2本目のReviewもRahbek率いるもので、この記事でRahbekらは多様な山岳環境がどのように変化してきたかを述べている。ここでは、地質学的プロセスと長期の気候プロセスが数百万年にわたって世界の山岳地帯で生物多様性を形成してきた仕組みが取り上げられている。

3本目のReviewはFrank Hagedorn らによるもので、そこでは山岳地帯の植生と極めて多様ではあるがほぼ観察されていない地中の土壌微生物群の相互関係について述べられている。活発化する人間活動と変動する気候に対する山岳地帯の植生の反応はかなり研究が進んでいるが、その反応の結果として生じる地中土壌微生物群の変化はそれほど解明が進んでいない。Hagedorn らはこれらの地中生態系が気候変動による植生の変化にどう反応するか、そしてその反応が生態系機能全般にとって重要な炭素と養分の短期的および長期的循環にどう影響するかを突き止めた。Hagedorn らは、地中生態系の変化、およびその変化と地上環境の変化との相互作用について正しい評価を行うためには、見落とされることの多い土壌生物相を既存の植生モニタリングプログラムに組み込むべきだと述べている。

4本目のReviewはAndrea Encaladaらによるもので、そこでは熱帯山岳地帯の川(TMR)が注目されている。TMRは熱帯山岳地帯に源流点があり、多くは低地の主要河川や氾濫原や海に流れ込んでいる。それらは地球で最も研究されている生態系の1つである。Encalada らはTMRについて世界的な視点に立った見解を述べ、それらが地球、動物、人間に世界的に提供している無数の生態系機能とサービスを取り上げている。Encalada らによると、TMRは特定の背景では研究されているが、高度と気温の大幅な勾配をカバーする総体的で動的なシステムとしての研究は珍しいという。TMRはこの特異な性質ゆえに、人間活動や気候変動などの急速な変化の結果と、生物多様性と生態系機能に対するそれらの広範な空間的・時間的尺度にわたる影響をより詳しく解明するための自然のモデルとして活用することができる。

Perspectiveでは著者のStephen Jacksonがフンボルト独自の科学と広範囲な人間体験の融合について検討している。フンボルトの考えでは、自然と人間は密接に絡み合っている。このことは200年以上にわたる観察で次第に明らかになってきた。私たちが地球環境に与える様々な衝撃の影響が人間の繁栄に対してはね返ってくるのである。Jacksonによると、フンボルトの思想は人新世で私たちが直面している最も緊迫した環境および社会の課題への取り組み方を提示しているという。「フンボルトの思想を思い返し、彼の遺した思想を基に事を進めると、安堵や鼓舞のみならず、自然と人々のより良い未来に向けた地図や物語も示してもらえる」とJacksonは書いている。

最後にPolicy Forumでは、山岳地域社会の課題と、科学情報に基づく政策が世界の山岳地帯に住む人々のための持続可能で回復力のある暮らしの実現にどう役立つかを取り上げている。山岳環境には約11億の人が生活しており、そのうちの多くは世界で最も貧しい。牧野由佳らによると、山岳地帯の住民の半数以上が食料不足に直面し、サービスやインフラも利用できない状況にあり、彼らの暮らしは‐彼らが我が家と呼ぶ山岳地帯の生態系とほぼ同じく‐自然災害や気候変動、持続不可能な資源利用に対して特に弱い。ゆえに、山岳地帯の生態系を保護、保全する方法を明確にすると同時に山岳地域社会の暮らしを向上することは、国連の持続可能な開発目標を達成する上で重要な一部である。牧野らはパートナーシップをいくつか取り上げている。たとえばマウンテンパートナーシップは、目標達成に向けて国連と協働する60の政府、16の政府間組織、約300の主要団体の自主同盟である。牧野らは、これらの取り組みに向けて効果的な政策を展開する上で科学研究が重要な役割をどのように果たして行くか説明している。

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