News Release

サッカーリーグのイスラム教徒とキリスト教徒の前向きな接触は団結を生むが、限界がある

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

対抗する集団が組んだ時に偏見がどう低減できるかを評価した研究によると、イスラム教徒のチームメイトを持つことで、イラクのキリスト教徒選手らのイスラム教徒選手らに対する行動が好転したという。しかし、施策に関わる「接触仮説」の厳密な解析を目指した事前登録済みのこの研究 ―― 接触仮説は長年にわたって研究され、社会的計画への資金を通知することに役立つ ―― では、その仮説の限界も明らかになった。サッカーリーグで進展のあった行動の改善はサッカー以外のより広い状況にまでは普及しなかったことがこの研究で示されたのである。関係するPerspectiveではElizabeth Levy PaluckとChelsey S. Clarkが、この研究は広く知られている研究結果の応用に分類されることがあるかもしれないが、それは的確ではないだろうと書いている。「接触仮説についてのこれまでの研究は、現実の世界で介入を行った上で原因と結果の実証をしたものではなかった」と彼らは書いている。彼らによると、このためこの新しい研究は根本的なエビデンスを追究する基礎科学のようになっているという。

接触仮説 ―― 集団間の社会的偏見は集団間の有意義な協調を通じて軽減できるという広く認められた説 ―― は、平和促進を目指す現実世界の戦略の基盤としての役割を果たすことが多い。この考えに一部基づいて、世界では、外集団との接触に焦点を合わせた平和構築プログラムに何十億ドルもの資金が費やされている。しかし、この仮説の仮定を厳密に評価する実証的研究はほぼない。集団間の接触が戦争後に社会的団結を構築できるかどうかを評価するためのフィールド実験として、Salma Mousaはアマチュアのサッカーリーグに対して、ISISに強制移住させられたイラクのキリスト教徒選手らをキリスト教徒だけのチームとイスラム教徒選手が3人混じったチームに無作為に所属させるという介入を行った。リーグ戦の後、Mousaは選手らの行動および態度に焦点を合わせた一連の結果を測定し、混合チームにいることでキリスト教徒選手はイスラム教徒のチームメイトに対する行動が変化したこと、しかしそれはサッカーに関連に限ることを発見した。混合チームでは、キリスト教徒選手はイスラム教徒選手にスポーツマンシップ賞を贈ったり、リーグ戦の後も彼らと試合やトレーニングを続けたりするようになった。したがって、この調査結果によると、彼らは態度ではなく行動が変わっている。しかしMousaによると、認められた行動変容は、例えばイスラム教徒の多いレストランに通う、知らないイスラム教徒が同席するイベントに参加するなど、見知らぬイスラム教徒のいる他の社会的状況にまでは及んでいなかったという。PerspectiveではPaluckとClarkが、行動変容の好ましい効果がサッカーリーグという背景を超えて普及しなかった1つの理由は、それらが態度ではなく行動に限られていることだと述べている。この研究結果は他の最近の偏見軽減研究と一致している。「今後の研究で、態度は(行動より)変えるのが単純に難しいのか、もしくは、現在の研究では正確な態度を測定していないのかを解明できるのでは」と彼らは書いている。Mousaの研究の成果は、戦争後の和平実現のために集団間に介入する有用性と潜在的限界を浮き彫りにしている。局所的団結によって関係する集団を例えば民族抗争の再開などからどの程度守れるかを今後の研究で調査すべきだと、彼女は述べている。

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