News Release

光合成で作られるデンプンの量を調節する仕組みを解明

Peer-Reviewed Publication

Kobe University

Figure 1: CRCT forming a complex with 14-3-3 protein in the nucleus.

image: Green fluorescent protein (GFP) was split into the N terminal and C terminal regions. Top row: Fluorescence from the reconstituted GFP was detected when the N terminal region was fused to CRCT and the C terminal region was fused to 14-3-3 protein, and these fusion proteins were expressed in the plant cell, indicating that CRCT can interact with 14-3-3 protein. DsRed is a red fluorescent protein that was used to confirm the genetic transformation. By staining the nucleus fluorescent blue with DAPI, it was possible to observe that the interaction of CRCT and 14-3-3 proteins took place in the nucleus. Middle row: On the other hand, GFP was not detected when CRCT was fused to both termini because CRCT proteins do not bind to each other. Bottom row: When both termini were fused with 14-3-3 proteins, the presence of GFP in the nucleus and cytoplasm indicated that 14-3-3 proteins bind to each other. view more 

Credit: Modified Fig. 9 of Fukayama et al. <em>Plant, Cell & Environment </em>(2021)

神戸大学大学院農学研究科の深山浩准教授らの研究グループは、イネを用いて光合成によって作られるデンプンの量を調節する仕組みの解明に世界で初めて成功しました。今後、農作物の品質の改良、収量増加につながることが期待されます。

この研究成果は、5月14日付(現地時間)で、国際学術誌Plant, Cell & Environmentに掲載されました。

ポイント

  • 植物は光合成により二酸化炭素からデンプンなどの有機物を合成し、二酸化炭素濃度の高い条件ではデンプン量が増加する。
  • 高い二酸化炭素濃度の条件ではCRCT*1と名付けたタンパク質が増加し、デンプン合成を促進すると考えられていたが、その仕組みは不明だった。
  • CRCTによるデンプン合成の調節に14-3-3タンパク質*2が関係していることを明らかにした。
  • CRCTは維管束の師部で合成された後、デンプンを貯蔵する柔細胞に移動して働いている可能性が示された。
  • CRCTが複数のデンプン合成関連遺伝子の調節領域に結合すること、また、転写活性化能力を持つことを明らかにした。
  • 植物にとってデンプン合成は最重要であり、その調節メカニズムの解明は、今後、農作物の品質や生産性の改良に役立つと考えられる。

研究の背景

大気中の二酸化炭素濃度の増加は、地球温暖化の主要因とされ社会問題となっていますが、植物にとって二酸化炭素は光合成を行いデンプンを合成するための原料となるため、好都合と言えます。実際に二酸化炭素濃度の高い条件で作物を育てると、デンプンの合成が促進され、生育が旺盛になり、収量も増加します。私たちは、イネを研究材料として二酸化炭素濃度の高い条件で働きが活発になる機能未知のCCTタンパク質(CRCT)について研究を進め、CRCTがデンプン合成の調節に働く重要なタンパク質であることを明らかにしました。しかし、CRCTがどのようにデンプン合成を調節しているのかは不明でした。

研究の内容

デンプンを合成するには、グルコース6-リン酸/リン酸輸送体、ADPグルコースホスホリラーゼ、デンプン合成酵素、デンプン枝作り酵素など多数のタンパク質が必要です。私たちはCRCTが、それら複数のデンプン合成関連タンパク質の遺伝子の働きを一括して調節していると予想しました。遺伝子の働きを調節するタンパク質は転写因子と呼ばれ、多くの場合に別のタンパク質と複合体を形成しています。植物体内でのCRCTの大きさを分析したところ、CRCTは何らかのタンパク質と複合体を形成していることがわかりました。次に、CRCTに特異的に結合する抗体を用いた分析を行い、CRCTと結合しているのが14-3-3タンパク質であること特定しました。また、緑色蛍光タンパク質を用いた分析により、CRCTと14-3-3タンパク質は、核内で複合体を形成していることを明らかにしました(図1)。CRCTは維管束の師部で合成された後、デンプンを貯蔵する柔細胞に移動して働いている可能性も示しました。さらに、CRCTは複数のデンプン合成関連遺伝子の働きを調節する領域に結合できること、転写を促進する働きを持っていることも明らかにしました。

14-3-3タンパク質とデンプンの量は負に相関することが知られていました。一方、私たちの研究からCRCTとデンプンの量は正に相関することがわかっています。これらのことから、私たちは14-3-3タンパク質とCRCTは不活性型の複合体を形成していると予想しています(図2)。

今後の展開

植物にとってデンプン合成は最重要であり、その調節に働くCRCTは農作物の品質や生産性の改良の有力なターゲットとなります。また、二酸化炭素濃度が高い条件で働きが活発になる遺伝子であり、将来的な二酸化炭素濃度の高い環境に適応したイネの育種に役立つ可能性もあります。さらに、私たちが調べた限り、全ての植物にCRCTに相当する遺伝子が存在します。現在、私たちはデンプン原料作物として重要なジャガイモのCRCTの機能についても研究を進めています。

学術的には、解決すべき問題が残されています。今回の結果からCRCTタンパク質は細胞間を移動していると考えられるのですが、そのメカニズムは不明です。また、CRCT自身の量は二酸化炭素の濃度や糖の量で変化しますが、その仕組みは全くわかっていません。CRCTによるデンプン合成調節メカニズムの全貌を解明することは、さらに高いレベルでの農作物の改良に繋がると考えています。

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用語解説

※1 CRCT CRCT(CO2-Responsive CCT protein)は植物が持つタンパク質で、二酸化炭素濃度が高い条件(おそらく糖濃度の増加)で蓄積量が増加し、デンプン合成を促進すると考えられています。

※2 14-3-3タンパク質 真核生物に広く存在するタンパク質で、細胞内のシグナル伝達や代謝調節に働くことが知られています。

謝辞

本研究は以下の研究助成を受けて行われました。

  • JSPS科研費(JP22114511)
  • ひょうご科学技術協会(31071)

論文情報

タイトル: “CO2-Responsive CCT Protein interacts with 14-3-3 proteins and controls the expression of starch synthesis-related genes” DOI:10.1111/pce.14084

著者: Hiroshi Fukayama1,*, Fumihiro Miyagawa1, Naoki Shibatani1, Aiko Koudou1, Daisuke Sasayama1, Tomoko Hatanaka1, Tetsushi Azuma1, Yasuo Yamauchi2, Daisuke Matsuoka3, Ryutaro Morita1

1 神戸大学大学院農学研究科資源生命科学専攻 2 神戸大学大学院農学研究科生命機能科学専攻 3 神戸大学バイオシグナルリサーチセンター *Corresponding author

掲載誌: Plant, Cell & Environment


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