心臓弁置換の大きな目標に一歩近づくため、心臓が大きくなるにつれて経時的に拡張できる適応可能な心臓弁代替品が開発された。この人工弁は、成長中の若い子羊で10週間まで安全に機能した。デザインをさらに検証するには長期間追跡を行う研究が必要であるが、このデバイスは、小児の心臓と共に大きくならない直径が固定された従来の人工心臓弁の優れた代替品となりうると考えられる。世界中で毎年135万人以上の小児が先天性の心疾患を持って生まれており、毎年約60億ドルの支出が生じている。このような疾患のうち、心臓弁が関与しているほとんどの疾患に対しては、人工弁置換術による治療が行われる。しかし、このような弁を持つ小児は、大人になるまでに、弁を交換するため最高5回の侵襲的な開心術を受けなければならず、発作、入院、さらには死亡のリスクがある。Sophie Hofferberthらは、手術の負担を減らせるより永久的な解決策を提供するため、ヒトの血管の弁からインスピレーションを得た心臓弁を開発した。血管の弁は血液量の大きな変化に対応するため、拡張し収縮できる。Hofferberthらの弁は、ステントに取り付けた2つの合成弁葉から成り、心臓内を移動する大量の血液に対処するためにバルーンカテーテルを用いて手動で拡張させることができる。4頭の若い子羊と4頭の成熟ヒツジに移植したところ、この人工弁は血流を邪魔することなく良好な性能を示した。他の7頭の子羊を用いた別の試験では、この弁は損傷や大きな炎症を起こすことなく10週間機能し続けた。Hofferberthらは長期の動物試験で、弁の持久性と心臓に対する影響、ならびに拡張可能な弁葉デザインの構造的完全性を評価すべきであると警告している。
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Journal
Science Translational Medicine