研究者らはインドの200以上の幼稚園・保育園の子どもたちを研究した結果、4ヵ月間にわたり算数のゲームに参加した児童は、小学校で受けることになるのと同様の算数の試験における成績が向上し、この効果は最長1年間にわたり持続したことがわかった。この研究は、現代の心理学における重要な仮定、すなわち小学校で教えられる記号を用いる算数の学習は、就学前の期間に直観的な認知能力を練習する活動によって促進されるという仮定について、フィールドテストを行う最初の取り組みの一つである。発展途上国の小児は、要求の多い小学校のカリキュラム、特に算数のカリキュラムに対する準備が十分にできていないが、この原因の一部はその不十分なカリキュラムにあると考えられている。小児の算数における推論の発達に関する何十年にもわたる実験室での研究は、小児が算数を始める準備のできる前に何を学習する必要があるのかを示すことをこれまで試みており、これによって、小児に対する基礎的な算数の能力のトレーニングに携わる、算数の知識のある大人による就学前での教育が有用である可能性が示唆されている。今回Moira Dillionらは、このような取り組みが実験室の外でも有効かどうかを明らかにするために、インドのデリーにおけるリソースの乏しい214ヵ所の幼稚園・保育園の1,500人の小児を対象とした研究を行った。一部の小児は大人から算数を習い、他の小児は社会トレーニングを受け、何のトレーニングも受けなかった小児もいた。著者らによれば、算数のゲームに参加した小児は数字や記号に関する知識などの領域で成績が向上したのに対し、社会トレーニングのみを受けた小児や何のトレーニングも受けなかった小児では向上は認められなかった。著者らは、算数のゲームに参加した小児のグループで認められた向上は、小学校において算数の概念に関する理解を獲得しなかったにもかかわらず、最長1年間持続したと述べている。そうであったとしても、この研究結果は、基礎科学を用いた学校のカリキュラムの改革の取り組みにとって情報を提供すると考えられる。
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