News Release

正常な組織はそれほど正常ではなく変異細胞のモザイク

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

正常な細胞集団は、これまで考えられていたほど「正常」ではなく、組織というのは生涯を通じて形成されてきた変異細胞のモザイクであることが、29種類のヒト組織から採取された6,700以上のサンプルに実施した包括的RNA配列解析から示されている。この研究から、がんリスクと関連付けられている遺伝子も含めた体細胞変異が、ヒト体内のほとんどあらゆる種類の正常組織において発生していることが分かった。さらにその結果から、日光暴露を受けた皮膚、咽喉および肺の組織ではより多くの変異が認められること、また環境因子が体細胞変異を促進している可能性があることが示唆される。ヒトでは加齢とともに、正常組織内の健康な細胞内に変異が蓄積していく。通常、こうした変異は受動的に増加し、細胞の挙動にはほとんど影響を及ぼさない。しかし、変異細胞は有害な変異クローンの集団として増殖することがあり、これがいくつかの疾患の原因となると考えられている。これまでの研究では、正常組織内におけるクローン性増殖ががんと関連付けられているが、どの特定のクローンが最終的に疾患の発現・進行につながり得るかについての理解は不完全である。正常組織における変異の多様性を探索するため、Keren Yizhakらは、RNAシーケンシング(RNA-seq)データを用いて正常組織内の変異クローンを検出するための新たな方法を開発した。この方法は、RNA-MuTectと名付けられたコンピュータパイプラインで、従来法のようにごく一部分の発現遺伝子ではなく、発現された全ての遺伝子について変異クローンを同定するものである。この方法をCancer Genome AtlasおよびGenotype-Tissue Expression(GTEx)プロジェクトの両方のRNA-seqデータに適用したところ、ドナー被験者のほぼ全例(95%)に当たる組織サンプルの37%にクローン性増殖が同定された。被験者の3分の1には、がんの原因となることが知られているゲノム領域または遺伝子に変異の存在が認められた。これらの結果は、組織における変異量は年齢、細胞増殖速度、および変異の原因となる外的な環境因子への曝露と関連することを示している。「セルフリーDNAを用いたがんの早期検出法が示している有望性も、何が正常で何が正常でないかということの理解に決定的に依存している」と、Cristian Tomasettiは関連するPerspectiveで記しているが、今後のがん研究におけるYizhakらの研究結果のもつ重要性を指摘している。

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