これまで長い間未解決の疑問、すなわち巨大ウイルスは生物の第4のドメインなのかという疑問は、今や間違いであることが証明されようとしている。研究者らは、他の多くのウイルスの要素と蛋白質を保有する一群の巨大ウイルスを同定し、分析の結果から巨大ウイルスがこれらの要素を進化の比較的最近の時期に獲得したことが示唆されている。巨大ウイルスの発見以来、これらの生命形態が実際にウイルスであるのか、ひょっとすると生物の第4のドメインを成すのかという重要な疑問が投げかけられてきた。この疑問に対する答えの手がかりは、オーストリアの下水処理施設の排水にあった。クロスターノイブルク(Klosterneuburg)にある施設で下水中のメタゲノムを分析したところ、Frederik Schulzらは巨大ウイルスの4つの新しい近縁種を同定し「Klosneuvirus」と名づけた。これらの巨大ウイルスの1つは非常に「巨大な」ため、19のアミノ酸と相互作用する酵素を産生する機序を維持しており、科学者たちにとってはこれらの巨大なウイルスを細胞や他のウイルスと詳細に比較するこれまでにない絶好の機会となった。研究者らは、Klosneuvirusがミミウイルス科(Mimiviridae)と呼ばれる科に属すると判定し、この科に属する3つの株の違いについて分析した。その結果、遺伝子獲得の量が遺伝子喪失の量を上回っており、これら3つの株はそれぞれ独立して、ゲノムサイズがかなり大きくなったことが分かった。また、一握りの酵素がミミウイルス科の株においてそれぞれ独立に登場したようであった。著者らはこの分析に基づいて、Klosneuvirusは細胞を祖先として進化したのではなく、宿主遺伝子の広範な獲得を通じて、はるかに小さなウイルスから進化したと示唆している。
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