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変身する材料:光でマクロ構造を再構築

OIST研究者が、紫外線による分解が可能で、さらに新た

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

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image: 人工着色された、自己組織化したナノ構造と再結合した分子の透過電子顕微鏡画像 view more 

Credit: OIST

従来の化学は、非常に多様で複雑、かつ微細な化学分子を生成するという点においては、非常に強力なツールです。 しかし従来の化学で不可能なのが、巨視的規模の大きな分子構造の合成で、これには膨大な量の化学物質に加え、精巧で複雑な技術が必要となります。これを達成するために科学者らは、分子が自発的に集まって自己組織化し、球状、筒状、その他様々なの形状を生み出す化合物を活用しています。沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者達は、このアプローチを利用しながら、分子を「準安定」状態に再編させる目的で、紫外線を用いるだけで、これまで見たことがない新たなエキゾチックで未発見の形状に変換可能な自己集合分子の生成に成功したことをChemical Communications誌に発表しました。

自己集合分子構造を作製する際、通常研究者らは最低のエネルギー状態、すなわち構造が最も安定している「基底状態」を追求します。不安定な分子形状は、生成を誤った望ましくないものとして、通常除外します。しかし、「基底状態」は非常に安定しているため、その形状を変更したい場合、構造を分解するのは困難です。今回の研究では、OIST研究者らは、基底状態の自己集合構造を敢えて脆弱にすることで、少しの刺激でも崩壊する構造にしました。その少しの刺激とは、紫外線の使用であり、紫外線が分子内の2つの原子間の特定の結合を切断し、構造をより小さな断片に分割するのです。こうしてできた分子の断片は、多少安定性に欠けた「準安定」と呼ばれる状態になり、新たにエキゾチックな形状に組織化することができます。

「本研究は、材料科学分野において新たなコンセプトを提唱しています。私たちは光を用いて、空間的・時間的に制御可能な方法で、自己集合現象を、結合現象に変換させました。そうして、従来の合成経路では不可能であったエキゾチックな異なる分子からなる新たなナノ構造を作り上げることに成功したのです。」と、本研究の著者で生体模倣ソフトマターユニットのイェ・ジャン准教授は説明します。

この新しいコンセプトは、驚きの発見ともいえます。なぜなら、崩壊後に残った断片が元々の構造を残したまま密に集合するため、単に同種の分子を混ぜるだけではできない新しくエキゾチックな構造ができるからです。一例として、これらのナノ構造が、レゴのピースで作られていると想像してみましょう。元々ナノファイバー状に自己集合している、横に2つ、縦に5つの突起がある2�5のレゴブロックがあるとしましょう。紫外線は、この2x5のブロックを2つの小さなピース、例えば2x3のブロックと2x2のブロックに分断させるように、ファイバー状の構造全体を壊します。しかし、これらの小ブロックは、崩壊前から組成されていた空間、つまりお互いの距離を保つため、肉眼でも見える新しい形状の分子集合体に再結合することができます。それとは対照的に、別の実験で、2x3のレゴブロックと2x2のレゴブロックをバケツの中でランダムに混ぜるようにするだけでは、元々の空間的組成の欠如により、新しいナノ構造の集合体ができません。

ジャン准教授によれば、新しい構造を作り出す技術は物質科学には極めて重要です。「物質科学では、機能と構造は密接に関連しています。異なる構造を生成すれば、その機能を操作したり、新たな分野に応用することも可能なのです。例えば、ナノファイバー状の分子の毒性は、球状に組み立てられた同じ分子よりも、ずっと低くなったり高くなったりすることがあります。」と、同准教授は説明します。

OISTの今回の研究では、最初の分子の状態が、自己集合分子の最終形状に最も影響するパラメータであることを強く示唆しています。「最初の状態のパラメータから分子が互いにどのように密集しているかを知ることができれば、特定のマクロ形状を生成するための、より多くの手掛かりが得られるはずです。」と、ジャン准教授はコメントしています。

分子における形状変換能力は、生物学分野においてにおいて大きな応用の可能性を秘めています。「例えば、分子を生体に導入した際、その分子がある種の構造になったとします。その後、光を用いてその分子の化学結合を分断することで、求める機能を持った別の構造に分子を切り替えられるのです。」と、ジャン准教授は語ります。

こうしたコンセプトは、医薬品設計において、生物内の器官、もしくは腫瘍などの標的に薬物が不活性状態で到達することを可能にし、かつより潜在的な副作用を減らすことができます。標的部位でその薬物の分子が分解されると、治療効果のある別の分子構造になりえるのです。

ジャン准教授は次のように結論付けました。「今のところ、生きた細胞にとって有毒である紫外線を使うのは理想的ではありません。私たちが追求する次のステップは、より生体適合性の高い自己集合構造を生成できるようにし、生体システムへの適応性を高めることです。」

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