研究者らは、マカクザルが自らの記憶想起の能力を評価するために用いる脳領域を特定した。これまで、自分自身の認知に関するより高いレベルの内省を必要とする、このメタ記憶のプロセスについて、一部の研究者らはヒトに特有のものと考えていたが、この研究からそうではないことが示唆される。自分自身の記憶能力を評価するには、記憶痕跡の強さに関する情報へのアクセスが必要となるが、この働きに関与する脳の構造および神経メカニズムについて、またそれらが通常の記憶想起とは異なっているか否かについては不明である。今回、この問題に光を当てるためにKentaro Miyamotoらは、非ヒト霊長類を対象としたメタ記憶の検査を考案した。これは、マカクザルに過去の経験の記憶における自信の程度を判定させるもので、サルが自らの記憶に対する判断が正確であることへの確信がより強い場合に、記憶想起検査の結果に対してより高い「賭け(bet)」を行うことを選ぶというものである。この検査と、機能神経画像検査による全脳検索を用いて、研究者らは、メタ記憶に関する決定を行うために不可欠の前頭前野における特定の脳領域を同定した。この領域の不活性化によりメタ記憶の選択的な障害が引き起こされたが、記憶そのものは影響を受けなかった。これらの結果は、これまでメタ記憶の評価を行うことが難しかった動物モデルを用いて、メタ認知における神経細胞に関わる基盤について今後の研究を可能にする道を開くものである。
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