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ラッコ個体群の回復には費用を上回る便益がある

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、太平洋岸沿いのラッコ回復の便益は同地域のカニ・ウニ・貝を対象とした漁業の商業的損失を年間で5,000万カナダドルも上回るという。James EstesとLilian Carswellは関係するPerspectiveで、今回の分析は捕食者との共存の費用便益を分析する中で被害を超えた先を見据えたものだと評している。捕食者との共存は長い間、生態学と天然資源管理が交わる領域に従事する人々にとって課題であった。ラッコは18~19世紀に絶滅寸前まで乱獲され、その後、カニや貝、ウニ‐ラッコに食べられることがなくなった ―― の個体群は繁栄し、北太平洋岸東部沿いに新しい漁場が開拓された。ところが今から数十年前、頂点捕食者であるラッコが再導入されて変革的な変化が起きた。その変化によって太平洋の象徴的なケルプの森はほぼ再生したが、それと同時に、今は安定している商業漁業が脅かされることになった。キーストーン種である捕食者の回復に起因するそのような社会生態学的対立は、よく見られるにもかかわらず検討されることがほぼないため、天然資源の公平な管理は困難になっている。

ラッコがかつての生息地の多くで再び繁栄するというカナダのバンクーバー島沖で起きている自然実験を利用し、Edward Gregrらはラッコ回復の複数の主要な経済的費用便益とその効果を評価するためのモデリングフレームワークを開発した。Gregrらのモデルは、同地域のデータで較正されており、沿岸生態系における今後の価値と種間の潜在的な相互作用の不確実性も説明している。Gregrらによると、観光産業、鰭脚類を対象とする漁業、炭素捕捉におけるラッコがもたらした総合的な金銭的価値の上昇は影響を受けた商業漁業の損失をはるかに上回るという。しかし、ラッコ回復の費用便益の分配は経済部門と地域社会、特に先住民族にとって不公平になるとGregrらは述べている。先住民族が被る損失は他より大きい。ただ、そのような生態学的変化の影響を定量化することは、対立を緩和し、生態系の変化についてパブリックアクセプタンスを促進し、地域社会に対して代替機会を明示するのに役立つと彼らは強調している。「Gregrらの分析によって生態経済学研究の新しい時代が切り開かれるに違いない。そういった研究は、天然資源に関する政策の立案者と管理者が捕食者に影響を及ぼす将来を見据えた合理的で公平な決定を行ったり、主張したりする際に活用できる」とEstesとCarswellは書いている。

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