News Release

ラッサ熱アウトブレイクのただ中でウイルスゲノムシークエンシングが活躍

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

2018年のラッサウイルス感染症アウトブレイクのピーク時に、ウイルスゲノムを評価するモバイル型のナノポアシークエンシング技術の展開を試みた最初の研究者らが、今回その結果を報告している。彼らの新しい研究によれば、この新規技術により、アウトブレイクの可能性がある場合にその特徴を現場においてリアルタイムで評価でき、ウイルス株のタイプや伝播経路などといった時間が勝負となる問題に対する答えが得られるという。ラッサ熱は、ウイルスによる出血性感染症で東アフリカにおいて流行しているが、主として感染したげっ歯類により汚染された食物の摂取を介してヒトに伝播する。東アフリカ全域で、ラッサウイルス感染症の症例はここ数年では勢いは弱まっていたものの確実に増加しつつある。通常は、毎年わずかな症例のみが報告されている。しかし、2018年初頭におけるナイジェリアでの症例の急激な増加はアウトブレイクの発生を示し、より病原性の高い、つまり伝播率がはるかに高い新型ウイルス株の登場したのではないかという恐れを引き起こした。こうした懸念を受けて Liana Eleni Kafetzopoulouらは、メタゲノムナノポアシークエンシングという新規ゲノミクス技術による小型のポータブルOxford Nanopore MinIONデバイス を用いた。この技術は、アウトブレイクが進行している現場で、モバイル機器により臨床サンプルから直接ウイルスゲノムシークエンシングを迅速に実施できるものである。Kafetzopoulouらは、7週間にわたり計120個のラッサウイルス陽性サンプルに対するシークエンシングを行って、このデバイスの可能性を試した。得られた結果の詳細からは、新規ウイルス株が原因であるとの決定的な示唆は得られず、またヒトからヒトへの伝播が発生していることも示されなかった。この結果から、げっ歯類による汚染がアウトブレイクの主要な誘因であることが示された。著者らによれば、この新規技術によりアウトブレイク発生初期に病原体についての詳細かつリアルタイムの特徴づけが迅速にできたため、新規ウイルス株や未知の媒介生物に関する懸念が解消されたという。またこの技術は、公衆衛生当局者にとって、適切な対応とリソースの分配を行うことを可能にした。PerspectiveにおいてNahid Bhadeliaは、モバイル型のナノポアシークエンシングデバイスのような新規技術は、いかに利用可能性が高いか、またいかに広範に使用されるようになるかによって真価が問われることになる、と示唆している。ラッサウイルスなどの危険なウイルスの脅威に曝されている地域の大部分は、いかなる種類の診断機器や検査機関なども存在しない。

###


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.