ヒトにその巧みな器用さを可能にする神経接続は出生時のマウスにも存在するが、生後すぐに抑制されることが新たな研究により示された。高度な霊長類の皮質脊髄(CS)系を他の種から区別する主要な特徴は、手の器用さのコントロールである。この器用さは、高度な霊長類で手の筋肉をコントロールする、CSニューロンと運動ニューロンの特別な接続により可能になると考えられる。他の哺乳類では、このような接続が発達するに至らないか、形成されても能動的に抑制される可能性がある。今回Zirong Guらは、生後間もないマウスでCSニューロンと運動ニューロンの接続の発達を抑制するメカニズムを同定した。生後数日齢のマウスにおいて、運動ニューロンとの接続が形成されてから、シナプスが委縮する プロセスによって神経接続が消失する、皮質脊髄路(CST)中の領域が明らかにされた。研究者らが選択的に受容体を欠損させたところ、特に欠損または阻害された場合にマウスにCSTと運動ニューロンの接続を維持させ、器用さの検査でより良好な成績を示すようにさせるPlexA1という1つの受容体を発見した。著者らによれば、ヒトの発達早期においては、脳内でCSTと運動ニューロンの接続をつかさどる層ではPlexA1の発現が弱いのに対し、対応する生後の期間におけるマウスではその発現が強いという。しかし、マウスのCST内でヒトと同様の転写を誘導すると、マウスのこの層ではヒトに認められるのと同様の神経発達が生じるという。著者らは、こうした神経接続の背景にある理由を推測して、おそらく手の器用さが高まっても四つ足の動物では適応上の利点が得られないため、あるいはそれによってむしろ適応上の負担をもたらすためと示唆している。
###
Journal
Science