セロトニン作動性ニューロンの発火を調節する新規の低分子化合物が、速効性の抗うつ作用を有することが、新たなマウスの研究により示されている。この結果は、大うつ病性障害(MDD)や、その他の難治性の気分障害に対する新規クラス治療薬の開発への新たな道を開くものである。MDDは、精神疾患のうちでも最も高頻度にみられるものの一つであり、世界中で何億人もの人々が罹患している。最新の抗うつ薬はセロトニン輸送体(SERT)を標的としている。しかし、これらの治療薬には限界がある。SERTを標的とする抗うつ薬は、効果を発揮するまで4週間かかるだけでなく、有害な副作用として統合失調症や自殺などにつながる可能性があり、これらを使用した患者で治療後に回復するのはごく少数にすぎない。このため、速効性の抗うつ作用を有する新規の標的および化合物として、上に述べたような重篤な問題を引き起こさないものが必要とされている。今回Nan Sunらは、そうした要求に答える一つの解決策を提示している。Sunらは速効性抗うつ薬をデザインしたが、これはSERTと神経型一酸化窒素合成(nNOS)の相互作用を阻害することで作用するものである。著者らは、マウスの脳内でSERTとnNOSの相互作用を阻害することで、脳内の背側縫線核と呼ばれる領域において細胞間のセロトニンが減少することを見出した。これにより、同領域におけるセロトニン作動性ニューロンの活性が高まり、内側前頭前皮質へのセロトニンの放出が劇的に増加した。これらの結果から、このデザインによりMDDマウスモデルにおいて速効性の抗うつ作用がもたらされたことになる。
Journal
Science
Article Title
Design of fast-onset antidepressant by dissociating SERT from nNOS in the DRN
Article Publication Date
28-Oct-2022