2021年、中国は海外での石炭火力発電所の新設を中止すると一方的に発表した。これは気候変動対策の重要なステップだと称賛された。しかし、この決定とは裏腹に、中国は石炭火力発電所の国内使用は引き続き支持している。Christoph NedopilがPolicy Forumでこの二項対立について論じ、これらの決定が下された経緯について新たな知見を提示している。Nedopilによると、この調査結果から、中国とより良い環境協力を行う取り組みにアドバイスが得られるという。中国は世界最大の温室効果ガス排出国になっており、貿易、金融、投資を通した中国の国際的影響力 ―― 世界最大級 ―― は世界の生物多様性や気候と極めて深い関係がある。Nedopilによると、世界的な環境リスクへの取り組みは、中国の国内及び国際経済の変革なしに成功することはないという。しかし中国の決断は、石炭の国内使用は支持しつつ、海外での石炭は否認するというもので、これは他の国々の計画とはそぐわないと思われる上に、中国の環境問題へのアプローチは「権威的環境主義」だという一般的な見解とも食い違っているように見える。Nedopilは今回、中国の石炭戦略成立の経緯について分析を行っている。彼によると、海外での脱石炭についての意思決定は、環境を考慮したのでははく、短期的な経済面及び財政面を考慮して下されたものであり、これを実現したのは脱石炭に賛成する少数の影響力のある利害関係者と国際パートナーだったという。一方、国内の脱石炭に対しては、複雑な利害関係者の圧力によって政治的リスクが上昇し、そこから石炭と再生可能エネルギーの両者の拡大を支持するという国内の環境アジェンダが決定した。この調査結果は、中国との環境協力には、中国のリスクに対する認識が異なることから、中国の国内と海外での取り組みを区別する必要があることを示唆している。Nedopilによると、中国との国際的な環境への取り組みは経済的及び財政的リスクに基づいて進めるべきで、国内での取り組みは利害関係者の複雑性と知識外交に焦点を当てる必要があるという。
Journal
Science
Article Title
Lessons from China's overseas coal exit and domestic support
Article Publication Date
17-Mar-2023