Policy ForumでKirk Johnsonらは、世界最大級の自然史博物館の73のコレクションに関する定量的調査について報告している。この世界規模のデータセットを使用して、彼らは、それが示すデータを、侵略的外来種、生物多様性の保全、気候変動、パンデミックへの備えといった種々の世界的課題への対応に活用できる情報資源に統合するための枠組みを提示している。世界各地の自然史博物館所蔵の膨大なコレクションは、地球の過去と現在を知る手段であるとともに、政策関連の調査の情報資源として重要性も高まっている。例えば、自然史博物館のコレクションのデータは、2018年の気候変動に関する政府間パネルの地球温暖化に関する特別報告書をはじめ、複数の重要な政策枠組みにおいて、生物多様性についての知識の主要情報資源として活用されている。しかし、その価値の莫大さにもかかわらず、これらのコレクションが保有する情報にアクセスすることはほぼ不可能なうえに、博物館のコレクションがどういったデータを保有しているかについても総合的な把握ができていない。世界の自然史博物館のコレクションを世界規模の総合的科学インフラに統合するための第一段階として、Johnsonらは、28ヵ国の73の世界最大級の自然史コレクションについて分析を行った。これには、博物館の館長や科学およびコレクション担当の主要スタッフと協力して博物館の所蔵品についてシンプルで迅速な調査を考案し、達成することが含まれる。分析結果は16の地理的地域にわたる19種類のコレクションに細分された。Johnsonらは11億を超える所蔵品について分析を行ったが、所蔵品でデジタル的に見つけられる記録を持つのはわずか16%、生物学的コレクションでアクセス可能なゲノムデータを持つのもたった0.2%という結果で、ほとんどのコレクションの情報はデジタル的なアクセスが不可能であることが判明した。このように大半が「ダークデータ」であるため、より広範な科学的探求と政策決定追究における博物館のコレクションの活用は大幅に限定される。Johnsonらは、博物館のコンテンツへのアクセシビリティを向上するための1つの提案として、コレクションのデジタル化に重点的に取り組んでいる組織などと提携するよう、博物館に呼びかけている。「自然史博物館のコレクションは社会全体に関係するソリューションをサポートするために必要な科学的インフラの1つです」と彼らは書いている。彼らはまた、自分たちの分析の限界も強調している。「何百もの規模の小さな博物館、そこのコレクション、そこのスタッフについては今回の調査の対象外ですが、それらも世界のコレクションです。それらは、各地域の所有物であることと特異的な専門性があるという観点から、非常に大きな価値があります。」
Journal
Science
Article Title
A global approach for natural history museum collections
Article Publication Date
24-Mar-2023