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新たに解明:アシナガキアリのキメラ雄を生み出す新しい生殖様式

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

アシナガキアリ(Anoplolepis gracilipes)の雄は異なる2つの遺伝的系統のキメラであることが、研究者により報告された。この研究によれば、この種には、これまで科学において知られていなかった独自の生殖様式があるという。ほとんどの多細胞生物は単一の細胞接合体から、遺伝的に同一の細胞の集合体へと発達する(生物学的遺伝の特徴)が、今回の新たな知見は、アシナガキアリの場合はこうした予測から外れていることを示している。この研究によれば、アシナガキアリの全ての雄は、他の多くの多細胞生物とは異なり、2つの遺伝的系統から成る一倍体細胞から構成されている。「キメラはこれまでにマーモセットやヒトを含む多くの種で報告されているが、単一の受精イベントからのキメラが恒常的に生まれるということはいまだ報告されていない」と、Daniel Kronauerは関連するPerspectiveで述べている。アシナガキアリは、植物にとって最も問題となる侵入種の1つである。この種に関するこれまでの遺伝的研究では、女王アリ、雄アリおよび働きアリの間に遺伝子型において未解決の不一致があることが明らかにされている。これらの観察結果について理解を深めるため、Hugo Darrasらは、東南アジア全域から採取されたアリに対して集団遺伝学および系統地理学の手法を用い、アシナガキアリの個体群内に2つの相互依存的な遺伝的系統(RおよびW)が共存していることを見出した。女王アリは常にR/R遺伝子型をもち、W精子によって受精された卵は雌のR/W働きアリに成長する。しかし、今回の知見によると、W精子で受精した卵は雄にも成長するが、遺伝的に雌になるはずの卵とは異なり、卵核と精核の融合は起こらない。その代わりに、卵核と精核は一つの卵の中でそれぞれ独立に分裂して、一倍体のR細胞とW細胞の両方で構成される体をもつキメラ雄となる。このようなキメリズムは幅広い種で観察されているが、通常は稀な発生上の偶然のイベントや、発生後期における別々の個体の融合が原因となっている。今回の新たな発見は、発生の開始時に生じ、アシナガキアリ種の雄を生み出す恒常的なキメリズムの形態を示している。Darrasらは、この稀な生殖様式は、2つの共存する遺伝的系統間に生じる、生殖細胞系における発現をめぐる遺伝的対立と関連している可能性があると示唆している。KronauerはPerspectiveで、このような複雑な生殖様式が、アシナガキアリが侵入種として成功したことに寄与したかもしれない理由について簡潔に触れている。その理由として、近交弱勢を妨げること、Wゲノムの確実な循環を維持することが含まれると考えられる。


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