ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で新たに撮像・分光観測を行った結果、赤方偏移9.5(ビッグバンから5億1000万年後に相当)の位置に強い輝線をもつ重力レンズ銀河が明らかになった。こうした初期の銀河についてはほとんど解明されていないが、本研究論文の著者らは、この遠方銀河のスペクトルに見られる輝線を用いて、その物理的特性の一部を明らかにした。かつて宇宙は不透明で、高密度の中性水素が銀河間空間に充満していたと考えられている。最初期の銀河が発した光によって、銀河間物質中のガスの大部分が徐々に再電離した結果、宇宙は一変し、透明になった。しかし、再電離の正確な時期や、宇宙最初期の銀河が再電離に及ぼした相対的影響についてははっきり分かっていない。Hayley Williamsらは、JWSTの近赤外線撮像・分光観測によって、重力レンズ効果で拡大された遠方銀河を見つけたと報告している。観測された銀河は赤方偏移9.5に位置しており、これはビッグバンから約5億1000万年後、再電離が完了する前に相当する。重力レンズ効果によって大きく拡大されたことで、著者らはもともと光の弱いこの銀河を検出し、強い輝線をもつスペクトル情報を得て、その銀河の物理的特性の一部を明らかにすることができた。Williamsらによると、この研究結果から、銀河の半径は16.2パーセクで、同等の光度をもつ他の銀河よりもはるかにコンパクトであることが分かり、高密度の星形成領域があることが示唆されるという。さらに、分光分析により、この銀河には酸素と水素が豊富に存在することも示されている。
Journal
Science
Article Title
A magnified compact galaxy at redshift 9.51 with strong nebular emission lines
Article Publication Date
13-Apr-2023