News Release

後退戦略:気候に起因する移住計画

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

気候変動に伴って、家を立ち退くか否かや、いつ、どこに、どのように立ち退くかを決めなければならない人々にとって、未来は気の滅入る不確実なものである。こうして家を追われた大勢の人々を受け入れることになるコミュニティも、難題に直面している。Scienceの特集「後退戦略:気候に起因する移住計画」では、学際的な基礎研究および応用研究は、コミュニティや政府がこの状況を乗り越えられるように、いかなる関与および支援ができるか(すべきか)について検討がなされている。この検討のように、「科学に何ができるかだけでなく、科学がどのように、だれによって行われるかについても考えなければならない」と、Scienceのsenior commentary editorであるBrad Wibleは強調している。

気候変動による後退を考える際には、どんな損失が受け入れ難いのか、社会のどんな面を維持すべきかに関して、不安が高まる。Reviewでは、Katharine MachとA.R. Sidersが分野を超えた研究を統合し、戦略的で管理された後退(つまり、社会的公正や環境衛生、文化遺産といった広範な社会目標を推進するような方法で、計画および実施される後退)へのロードマップを作成した。MachとSidersによると、この後退計画は過去の慣例とは異なるという。歴史的に見ると、これまでの管理されたプロジェクトの大半は、わずかな政策手段で、乏しい社会的価値に基づいて、徐々に適応させる方法だった。また、こうした取り組みでは、だれが土地家屋の買い上げの申し出を受け、その過程でどのような扱いを受けたかについて、公平性の懸念も生じてきた。著者らは、気候に起因する後退は「優先順位の低い、政治的に危険な選択肢」として考案された歴史があると述べている。MachとSidersによると、もし後退が優先されていたならば、効果的にリスクが低下し、社会的に公平性が増し、経済効率がよくなっていた可能性があるという。さらに著者らは、これまで実施されてきた後退の方法に注目し、さらに管理された後退を実施できると主張している。「デザイン思考やプラニングから学んだ教訓や、幅広い社会科学やアートから得られた見識の統合によって学んだ教訓」を実践すれば道は開ける、とMachとSidersは述べている。また彼らは、こうした構想を追求すれば、有益な結果が出るだけでなく被害が出る恐れもあることを指摘している。「特に、トップダウンの構想や過度に技術を楽観視した構想によって、植民地主義的な慣習や独裁的な慣習、その他の不公平な慣習が存続する可能性がある」。したがって、効果的なプロセスを実施するうえで重要なのは、その地域の情報や先住民の情報、科学的情報、その他の学術的情報、有意義な公開討論など、多様な反応を含む要素を取り入れることである。「この論文を執筆した目的は、管理された後退がすべての場所で最適な適応策になると提案することではなく、気候関連の変革において後退を真剣に考えるよう促すことである」と、著者らは述べている。

また、この特集に併せてEditorialでも、気候変動の影響で強制的に居住地から移住させる取り組みにおいて、主導的な役割を果たす先住民コミュニティの重要性を強調している。「先祖伝来の土地を離れるという辛い決断をするコミュニティは、加速する気候危機に対処する長期適応戦略を立てる取り組みについて、確実に研究的裏付けをとるために、研究の実施方法についてあらゆる面を明確にすべきである」と、Robin BronenとPatricia Cochranは述べている。5つのPolicy Forumでは、気候変動による住民移住で生じる隠れ費用のことから、気候リスク評価におけるボトムアップ分析が欠如しているため、その地域に適した建設的な解決策を見出す人間の能力が過小評価されていることまで、幅広い問題を取り上げている。1つのPolicy Forumでは、南アジアの国々のなかでも気候変動に対して特に脆弱なバングラデシュは、災害管理や適応、レジリエンス(回復力)のモデルになりうると強調している。

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