国際宇宙法の戦略的解釈に基づき、商業宇宙資源採掘に影響を及ぼそうとする米国政策立案者の試みに対応して、Aaron BoleyおよびMichael Byersは本政策フォーラムにおいて「米国以外の国々は今や声を上げる必要がある」と主張した。米国以外の多数の国々に認められると、結果として得られる政策はNASAアルテミス協定によって束縛から解放され、これによって米国が月その他の天体の唯一の門番の立場になるであろうとこれらの著者たちは警告している。そのような米国中心主義的政策は、「人類の共有財産として」月を保護する1979年国連月協定ならびに月その他の天体の「国有化」を禁止する1967年宇宙条約に違反している可能性がある。トランプ米大統領が2020年4月、大統領令に署名して宇宙資源採掘権を支持した直後、NASAはアルテミス協定 を発表しており、当該協定はNASAアルテミス月探査計画に加入するために必要とされる一連の協定である。当該協定の下では、商業化された宇宙資源採掘は国家の規制にのみ従うことになり、私企業は「安全地帯」を宣言して、外部からの干渉を受けることなく、そこで活動することができることになってしまう。有人月探査の魅惑によって、国々は当該協定の受諾に向けて動く可能性がある。これはすべて「国際宇宙協力を短期的な米国の商業上の利益に有利な方向に向けるための協調された戦略的取り組みであり、それに伴うリスクが殆んど考慮されていない」とこれらの著者たちは主張している。管理されていない小惑星資源採掘によるリスクとしては、人工衛星および宇宙活動が危険に晒され得る人工隕石、宇宙デブリの増加ならびに、最悪の事態として、隕石の方向変更および地球衝突が挙げられる。「単独または2国間で推し進める代わりに、米国は国連宇宙平和利用委員会内での宇宙資源採掘協議を支援すべきである」とBoleyおよびByersは述べている。より広い視点から、宇宙関係の規制を各国政府に委ねることが実行可能であるかもしれないが、現状では「底辺への競争」に向かう危険性が高いとこれらの著者たちは指摘している。
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