News Release

がん治療のためにCRISPR編集された細胞の初の第1相試験において編集細胞の安全性と持続性が明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

進行がん患者に対して米国で行われたCRISPR遺伝子編集の初の試験において、研究者らはこれらの患者で有害な副作用は認められなかったこと、また編集されたT細胞が患者の体内で数ヵ月にわたり存在したことを報告している。この第1相臨床試験の結果は、遺伝子編集アプローチは(これまで確認されていなかったが)安全かつ実施可能であることを示唆しており、この結果は、がん患者の免疫系ががんを攻撃するのを助けるために遺伝子編集技術を用いるという最終的な目標に向けての、重要な一歩となるものである。CRISPR-Cas9による遺伝子編集は、ヒトのT細胞においてがんを攻撃する本来の能力を高めてくれる強力なツールを提供する。T細胞の遺伝子編集による治療は、極めて最先端のがん治療法であるが、CRISPR-Cas9により編集されたT細胞が患者にとって忍容できるか、またひとたびヒトの体内に注入された場合に生存できるかどうかは不明であった。今回Edward A. Stadtmauerらはこの問題を検討するために、標準治療で効果が得られなかった60歳代の進行がん患者3例に焦点を当てた。著者らはまず、これらの患者の血液中からTリンパ球を取り出し、CRISPRを用いてこれらの細胞から、がんを攻撃する免疫機能を阻害する可能性のある遺伝子を除去した。次いで著者らはこれらのT細胞に、一般的にがん細胞の表面上に認められる蛋白質であるNY-ESO-1を攻撃できるよう、あるウイルスを装備させた。著者らはこれらのT細胞を患者の体内に注入して戻し、細胞の生着と生存についてモニタリングを行った。その結果、毒性を伴う副作用は認められず、また遺伝子編集されたT細胞は注入後、最長9ヵ月にわたり検出可能であった、と著者らは報告している。今回の研究は、同研究にも参加していたCarl JuneらがT細胞導入療法を開発した以前の研究を受けたものである。関連するPerspectiveでJennifer HamiltonとJennifer Doudnaはこう記している。「今回の結果は細胞工学の分野に対して、遺伝子編集を行った体細胞を安全に生成し、免疫原性を伴わずに投与することについての指針を提供するものである」。また両人は付け加えて「今回の研究で答えが得られないまま残されている大きな問題は、遺伝子編集によって操作されたT細胞が、進行がんに対して効果的なのか、ということである」と述べるとともに、Stadtmauerらによる今回の研究は、2016年に利用可能であった遺伝子編集プロトコールを用いているという限界があり、現在利用可能な最新の技術を用いるならば、遺伝子編集を受けたT細胞はより効果的となる可能性がある、と指摘した。

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