良好なマウスモデル構築への道は、マウスに定着している微生物から始まる。新しい研究によれば、天然の微生物叢と病原体を持って生まれた実験用マウスは、広く利用されている通常の実験動物と比較して、免疫学に関するトランスレーショナルリサーチにおいて大きな価値がある可能性がある。この小さな白い実験用マウスは、いろいろな意味で、生物医学的研究の典型的ヒーローである。マウスは何世代もヒトの健康と免疫学をより深く理解するための探求における貴重なモデルとなっており、何百万人もの健康は小さな白いマウスを用いた単純な試験から始まった薬物治療の賜物である。しかし、トランスレーショナルモデルとして、実験用マウスは完ぺきとは程遠い。マウスを用いて最も成功した前臨床試験でも、ヒトの臨床診療への応用に失敗する。最近の研究で、近交配した実験マウスのミクロバイオーム多様性が「野生型」の範囲ではなく、天然の免疫系機能を正確な反映を大きく損ないうることが示された。これらの欠点に対処し、より重要なマウスモデルを構築するため、Stephan Rosshartらは実験マウス種の胚を野生型に移植し、「野生化（wildling）マウス」（野生型と同一の多様な細菌、ウイルス、および真菌コミュニティーを持つが、実験動物の遺伝的均一性を維持しているマウス）を作製した。この野生化モデルのトランスレーション可能性を評価するため、Rosshartらは、実験用マウスで過去に失敗した2件の前臨床薬物研究を野生化マウスを用いて再現した。結果から、2件ともに、野生化マウスを用いた場合は薬物に対するヒトの反応をより正確に予測でき、失敗した臨床試験を回避できたことが明らかになった。「野生化ミクロバイオームがヒトのミクロバイオームと似ているため、野生化マウスはヒト臨床試験の成功を予測できるエレガントかつ頑健な前臨床モデルとなる可能性が高い」と、関連したPerspectiveでSamuek NobsとEran Elinavは述べている。
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