今回のPerspectiveではDuan Biggsらが、密猟からのゾウの保護を支援したい2団体が、方法は異なりながらも、共通の目標を達成する策を見出せる方法について述べている。この10年間で象牙目的での密猟が原因でアフリカゾウの個体数が急激に減少しており、それを受けて、ゾウを保護するための最善の政策は何かについて議論が激化している。象牙取引を全面禁止にする、ゾウの保護の奨励とその資金供給のために規制付きで取引を許可するなどである。Biggsらはそれぞれの策の賛否について検討しているが、実際の見解の相違は利害関係者の様々な道徳的観念、つまり「価値観」を認めていないことに起因すると述べている。もう一つの大きな問題は、野生のゾウの分布域が多数の国にまたがっており、国によって最善策についての意見が異なること、および、密猟の減少を目指す取り組みを監視、実行する資力も異なることである。Biggsらは採用可能な5つの主要策の概要を述べている。たとえば、ゾウに対する他の脅威(生息地の喪失など)の原因を究明する議論を行うことにより、政策介入についての利害関係者の見解の相違点や共通点を明確にするなどである。Biggsらはまた、偏りを最小限にとどめ、すべての関係者が妥当と見なす方法で様々な政策の結果を評価する体系的な取り組みを推奨している。さらに、この問題についての過去の主要な議論はほぼ国際機関同士で実施されていたが、小規模な主要関係者団体同士の相互交流の方が利害関係者の信用や合意を生みやすいとも述べている。
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