News Release

国際法におけるギャップがパンデミック研究を妨げている

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

COVID-19の世界的パンデミックにより、国際法におけるギャップが明らかになっている。このギャップは、新規ウイルスの脅威に対応するための診断ツール、抗ウイルス薬およびワクチンの適時の開発にとって不可欠となる、科学的情報、生物学的サンプルおよび遺伝子配列データ(GSD)の共有を妨げる可能性がある。しかし、Michelle RourkeらによるPolicy Forumによれば、グローバルな公衆衛生の取り組みにとって決定的に重要であるにもかかわらず、国々に対して病原体のサンプルやデータを共有するという法的な義務または先例は現時点で存在しない。「公衆衛生上の危機において、病原体や関連するGSDを共有するようにという明確な法的義務がないことは、国際的な法体系およびガバナンスにおける盲点であり、パンデミックに対する対応と科学的な進歩を妨げている」と、著者らは記している。Rourkeらは、COVID-19パンデミックの早期における新興のSARS-CoV-2ウイルスに関する情報およびデータについて調べることで、国際法において、国際的な科学的協力を妨げる主要なチェックポイントを明らかにすることを試みた。世界保健機関(WHO)は、全加盟国に対して、国際的な公衆衛生上の危機に関わる可能性のあるあらゆるイベントに関する全ての公衆衛生情報をWHOに報告するよう要請しているが、公衆衛生上の危機に関わる情報の内容の定義は依然としてあいまいであり、おそらく広く解釈されている。具体的に挙げれば、WHOの方針においては、WHOに報告すべき情報として、GSDについても生物学的サンプルについても分類が示されていない。事態を複雑にしているのは、国際的な方針、例えば生物の多様性に関する条約およびこれに関する名古屋議定書などでは、遺伝的リソースに対して各国が主権を主張することを認めるとして、法的に拘束力のある合意を行っており、こうしたリソースには、広くは新型コロナウイルスのようなヒトウイルスも含まれるということである。このように、物理的サンプル遺伝的データの共有に関する国家の権利と義務における法的一貫性の欠如は、最終的にパンデミックに対する準備と対応を妨げている。Rourkeらは、グローバルな危機に直面している現在、国際的な科学協力体制を強化するために、こうした国際法におけるギャップに取り組む必要があると主張している。「COVID-19パンデミックの状況は、迅速な情報共有の必要性を示す好例であるが、それと同時に病原体の遺伝的リソースおよび関連するGSDに対する主権の放棄が簡単にはできないという各国の現実をも明らかに示してもいる」と、著者らは記している。

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