新しい研究によると、ブチハイエナの社会において、社会的ネットワークの相続 ―― 子が母から受け継ぐ ―― はハイエナの生活と生存に欠かせないという。動物の社会的ネットワークの構造はあらゆる社会過程、および、健康状態、生存、繁殖成功に重要な役割を果たしているにもかかわらず、野生において社会構造を決める一般的な仕組みは依然として解明されていない。社会的相続と呼ばれる提案されたモデルで、子の社会的親和は親、特に母親の社会的親和と似る傾向にあることが示唆されている。これまでの研究では、多数の種においてこういった社会的ネットワークの相続が世代を超えて社会的構造に影響を及ぼしている可能性も示されてきた。今回Amiyaal Ilanyらは、高度に構造化されたメス優位のブチハイエナ社会における社会的相続の役割について評価を行った。Ilanyらは、社会的ネットワークの分析と27年間にわたって収集したハイエナ野生群の73,767の社会的相互作用の観察結果から成る複数の世代間にわたるデータセットを併用し、幼いハイエナの社会的関係は母親の社会的関係に類似していること、また、その類似のレベルは母親の社会的地位に応じて上がることを発見した。その研究結果ではさらに、母子関係の強さは社会的相続に影響を及ぼすとともに、母子両者の長寿との間に正の相関関係が認められることも示された。Ilanyらによると、この研究結果から社会的相続淘汰はハイエナの社会的行動と個々のハイエナの適応度の形成に重要な役割を果たしていると考えられるという。関係するPerspectiveではJosh FirthとBen Sheldonが、「さらに研究を進めて、様々な個体群構造において特定の社会的関係がどの程度広く相続されているか、そして、このことが社会的ネットワークの構造に依存する多くの社会過程の進化速度に対してどんな意味を持つのかを調べなければならない」と書いている。
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