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外傷性脳損傷が脳に対して及ぼす長期的影響の分子機序に関する知見

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

軽度外傷性脳損傷(TBI)後に、補体因子C1qと呼ばれる分子が脳損傷による二次的影響、例えば睡眠障害、てんかん活動、あるいは炎症などに関与している可能性が、マウスを用いた新たな研究により示されている。この結果は、遺伝子または薬物による補体経路の操作により、軽度および重度TBIの転帰が改善する可能性を示唆している。外傷性脳損傷(TBI)は小児および成人における障害の主要原因であり、世界で年間約6,900万人もが受傷している。軽度TBIであっても、認知機能および感覚機能障害、睡眠障害、およびてんかんなどに至る場合がある。しかし、これらの転帰の多くは、TBIの帰結として発生する間接的な二次的損傷によって引き起こされ、最初の受傷時から数ヵ月、さらには数年経ってから生じる場合がある。こうした二次的損傷がどの部位で、いつ、どのようにして生じるのかということが、TBI関連障害の予防および治療にとって極めて重要である。これまでの研究から、TBI後の障害のメディエーターは補体経路である可能性が示唆されており、補体経路が脳の損傷部位の周辺で炎症や神経毒性の亢進を促進していることが考えられる。Stephanie Holdenらは軽度TBIのマウスモデルを用いて、補体経路のメディエーターの1つである補体成分1q(C1q)の役割について評価を行った。その結果、C1q発現の亢進が、特に皮質‐視床‐皮質回路における慢性炎症および二次的ニューロン喪失に寄与していること、またそれが睡眠障害および脳におけるてんかん活動の発現と関連していることが明らかになった。さらに、HoldenらはC1q発現を阻害することでそうした転帰が抑制されることを示し、この所見からC1qがTBI後の転帰を左右する因子であることが示唆される。


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