News Release

特集号:草の知られざる価値

Reports and Proceedings

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

今回のScienceの特集号では、Perspectiveと4本のReviewで、草の知られざる価値を取り上げている。非常に多様な植物種からなる草は、重要な生態系サービスや資源を提供している。草は人間の主要な食物源であるだけでなく、陸上生物圏の40%近くを占める草原生態系は、さまざまな動植物の生息場所でもある。しかし、草原は相次ぐ土地利用転換や気候変動の脅威にさらされている。今号の冒頭で、Scienceの副編集長Bianca Lopezらは「我々人間が草の多様性と価値を十分に認識しさえすれば、草は我々が現在抱えている多くの社会問題を解決してくれるだろう」と述べている。

これと同じことを、Caroline StrömbergとA. Carla StaverはPerspectiveで述べている。著者らによると、人間という種の歴史は、何百万年も前から草原のバイオーム(生物群系)と密接に関係してきた。我々の始祖はサバンナで誕生し、小麦や大麦といった草の栽培が可能になると農耕社会が生まれた。こうした草が重要な食物源となって人口が増加し、それが現在も続いている。しかし、数ある生態系のなかでも草原バイオームは、進行中の気候変動やその他の人為的影響による打撃を特に受けるだろうと予測されている。今回StrömbergとStaverは、こうした地域の重要性について認識は高まっているが、政策や管理に役立つ情報を得るためには、草原バイオームの過去と現在の機能について理解を深める必要があると論じている。

気候変動と人間の活動によって、世界中の草原の破壊・劣化が著しく進んでいる。Elise BuissonらによるReviewでは、草原の回復と最近の研究について論じている。その研究では、草原の回復は遅いかまたは全く進んでおらず、しかも、効果的な回復を促進または誘導するための介入方法も不明で、特に森林生態系の回復に比べると理解が進んでいないことが示唆されている。Buissonらによると、草原は比較的最近に形成されたバイオームであり、攪乱後の回復が早いと考えられてきたという。著者らは、草原の回復は、成熟した草原という終点に向けた長期的過程としてとらえる必要があると主張している。「『国連生態系回復の10年』に入った今、成熟した草原の損失および生物多様性の低下と闘うつもりならば、草原回復の技術と実践を進歩させることが極めて重要である」と、Buissonらは述べている。

Yongfei BaiとM. Francesca CotrufoによるReviewでは、草原を保全して植物の多様性を高めれば、土壌の炭素貯蔵を促進できることを示した研究を取り上げている。草原は世界の陸域炭素貯蔵量の約3分の1を貯蔵しており、重要な土壌炭素吸収源として機能し続けている。著者らによると、草原の管理方法を改善すれば、低いコストで高い炭素貯蔵が実現し、自然による気候緩和が可能になるという。

Paula McSteenとElizabeth KelloggによるReviewでは、多くの人間が直接的・間接的に食料としている草を含め、現在世界中に存在する約1万2000種もの多様な草をもたらした、遺伝と進化の過程を取り上げている。

最後に、Richard UnsworthらによるReviewでは、水中で花を咲かせる特殊な草、海草に注目している。陸上の草と同様に、海草も世界中の浅瀬の海に草地を作り、漁業や海岸保全、気候緩和にとって重要な役割を果たしている。しかし、海草バイオームも危機的状況にある。Unsworthらは、過去と現在の海草分布と生態系におけるその役割について概観を示した。さらに、著者らは海草生育地を存続させるための保全方法についても提案している。


Disclaimer: AAAS and EurekAlert! are not responsible for the accuracy of news releases posted to EurekAlert! by contributing institutions or for the use of any information through the EurekAlert system.