有糸分裂機能およびテロメア機能に関連する遺伝子における先天性の病理的欠損は、特に肉腫のリスクを高める可能性がある、と研究者らが報告している。肉腫とは、筋肉、骨およびその他の結合組織に発生する稀ながんである。この結果は、肉腫発症に関する新たな生物学的洞察を提供するものであり、肉腫の素因に関する遺伝的リスクプロファイルを改善するための有用な情報となる可能性がある。肉腫は悪性度が高く、治療の難しいがんで、年少者で発症する傾向がある。しかし、肉腫は比較的稀であるため、他のより一般的なタイプのがんと比べて理解が進んでいない。肉腫の基礎にある特異的な遺伝的経路を明かにするため、Mandy Ballingerらは、肉腫患者1,644例およびマッチさせた健康対照者3,205例を対象に、包括的な集団ベースの症例対照による全ゲノム生殖細胞系列シークエンシング(WGS)を実施した。その結果Ballingerらは、有糸分裂機能およびテロメア機能の健全性と関連する遺伝子、特にそれぞれセントロソーム複合体およびシェルテリン複合体の要素をコードする遺伝子に、14の病原性バリアントを特定した。この結果から、これらの生物学的プロセスが肉腫の素因をもたらすカギとなっており、肉腫の先天性リスクを高めることが示唆される。「Ballingerらによるこの研究は、これらの候補遺伝子が肉腫の素因であることをより確定的に確立するための、また生殖細胞系列の病原性バリアントによって付与されるがんの素因の浸透とスペクトルを明らかにするためのさらなる研究を促すはずである」と、関連するPerspectiveにおいてDiana MandelkerとMarc Ladanyiは記している。「もし確認されれば、その結果はリスクの高い遺伝子の検査およびがんサーベイランスを可能にすることになるため、肉腫の患者とその家族の管理にとって極めて重要なものとなろう。」
Journal
Science
Article Title
Heritable defects in telomere and mitotic function selectively predispose to sarcomas
Article Publication Date
20-Jan-2023