Aleksandar Obradovicは、薬物療法を免疫応答薬と組み合わせてがんを治療するために個別化する細胞特異的な治療法を開発した業績で、2023年度Michelson Philanthropies & Science Prize for Immunologyの大賞を受賞した。Obradovicは受賞したエッセイで、個別化するがん免疫療法により抗腫瘍免疫応答を利用するその研究について詳しく述べている。これらの治療法とシングルセルRNAシーケンシングデータは、著者らが開発した2つのアルゴリズムの情報に従って、従来の抗がん薬と組み合わせられた。これらのアルゴリズムは、一つがタンパク質活性を推測するもの(VIPER)、もう一つが薬物感受性を予測するもの(ARACNe)で、様々な腫瘍タイプにおいてがん治療抵抗性と関連する細胞集団を特定することができる。ObradovicらはColumbia University Irving Medical Centerでこれらのツールを開発し、治療がよく奏効する患者をそうでない患者と比べて、奏効を予測する免疫特性を特定した。Obradovicは、免疫療法は従来のがん治療からのパラダイムシフトであり、抗腫瘍免疫応答を、腫瘍増殖メカニズムとは独立して幅広く活性化させるものだと記している。それでも、多くの患者は免疫療法で奏効が得られず、このことが著者独自のアプローチのきっかけとなったという。「シングルセルRNAシーケンシング実験で多くのデータが失われているため、これはクロスワードパズルを解くようなものだ。ARACNeはどの言葉からどの文字が失われているかを教えてくれる辞書であり、VIPERはパズルを解く役割で、ほとんどの文字が失われていても正しい言葉を見つけることができる」と、Obradovicは説明した。彼が自らの研究について将来に向けて最もしたいことは、予測された薬物の組み合わせの発見を新たな臨床試験と患者ケアに結び付けることであり、現在は放射線療法が免疫に及ぼす作用を自らのアプローチに統合する研究を計画している。
Roser Vento-Tormoは、そのエッセイ「外来抗原寛容性を解読する:ヒト寛容原性環境の細胞アトラスは革新的な免疫療法に導く(Decoding foreign antigen tolerance: Cell atlases of human tolerogenic milieus guide transformative immunotherapies)」で最終選考に残った。その研究は、細胞‐細胞コミュニケーションと組織微小環境が、免疫と発達という背景において、どのようにして細胞の同一性と機能を調節しているのかに焦点を当てている。Joshua Tanはそのエッセイ「共通の土台を探し求めて:保存されたコロナウイルス融合ペプチドは広域中和抗体の標的である(Searching for common ground: The conserved coronavirus fusion peptide is a target of broadly neutralizing antibodies)」で最終選考に残った。その研究は、感染性病原体に対するヒト抗体応答について、モノクローナル抗体の研究を通じて理解することに焦点を当てている。
Journal
Science
Article Title
Precision immunotherapy
Article Publication Date
17-Feb-2023