News Releases
Updates every hour. Last Updated: 1-May-2025 01:08 ET (1-May-2025 05:08 GMT/UTC)
28-Apr-2025
次世代機能性材料「超分子ゲル」の形成メカニズムを分子レベルで解明
National Institutes of Natural SciencesPeer-Reviewed Publication
明治薬科大学の木村真也 講師、山中正道 教授、名古屋大学の内橋貴之 教授(生命創成探究センターとの兼務) 、静岡大学の河合信之輔 准教授、千葉大学の矢貝史樹 教授を中心とする研究チームは、帝京科学大学、コンフレックス株式会社、分子科学研究所との共同研究により、 医療や環境分野での活用が期待される次世代機能性材料である 『超分子ゲル』がどのように作られるのか、 その過程をナノメートル(10億分の 1 メートル)のスケールで「動画」として捉えることに世界で初めて成功し、超分子ゲルの形成メカニズムを解明しました。
超分子ゲルは薬を適切な患部へ届ける 「薬物送達システム」や人工組織材料、 汚染物質を取り除く環境材料など、様々な分野で活躍が期待されています。研究チームは、 「高速原子間力顕微鏡」という特殊な顕微鏡を使って、 非常に細い繊維 (超分子ファイバー) がどのように成長してゲルになるのかを 「動画」として捉えることに成功しました。 さらに、 ゲルが形成されていく全体の過程についても、 ビデオカメラ撮影とコンピュータによる画像解析を行い、ファイバーの形成から成長に至るメカズムの全体像を明らかにし、 超分子ファイバーの成長を説明できる新しい理論を提案しました。 今回の成果は、超分子ゲルの性質をより自由に制御できる道を開き、将来的には医療・環境分野をはじめとしたさまざまな分野での応用に大きく貢献することが期待されます。
本成果は、Nature Communications(電子版)にて 2025 年 4 月 22 日(火)に公開されました。
- Journal
- Nature Communications
- Funder
- Grant-in-Aid for Scientific Research, the Japan Society for the Promotion of Science (JSPS) or the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), Grant-in-Aid for Scientific Research, the JSPS for a Research Fellowship for Young Scientists, Grant-in-Aid for Scientific Research, a CREST Grant-in-Aid from the Japan Science and Technology Agency (JST), JSPS KAKENHI in a Grant-in-Aid for Transformative Research Areas "Materials Science of Meso-Hierarchy"
24-Apr-2025
動物のエネルギー消費を動画から推定する画期的な方法を提案
Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate UniversityPeer-Reviewed Publication
エネルギー消費の観点から動物の動きを測定するための優れた手法はすでに存在していますが、使用する機器の物理的な大きさが制限となっていました。今回、沖縄科学技術大学院大学(OIST)海洋生態物理学ユニットの研究チームは、エルサレム・ヘブライ大学のアマツィア・ゲニン教授との共同研究で、ディープラーニングを用いて、映像と3Dトラッキングから動物の運動中のエネルギー消費を測定する画期的な手法を開発し、その研究成果は科学誌『Journal of Experimental Biology』に掲載されました。
- Journal
- Journal of Experimental Biology
- Funder
- Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University, Japan Society for the Promotion of Science
24-Apr-2025
米国の乳牛におけるH5N1の出現および拡散を追跡する
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
米国の乳牛における高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の拡散は、野生のトリからの単一のスピルオーバーイベントにまで遡ることができることが研究により報告され、同ウイルスが進化し、種を越えて伝播することでパンデミックリスクが増大する懸念を呼びかけている。HPAIウイルスは、動物の健康や農業のみならず、種の壁を乗り越えるその能力のためにヒトの健康にも重大な脅威をもたらす可能性がある。特に2.3.4.4bクレードH5N1という株が世界的に拡がっており、野生のトリや家禽、そして少数のヒトを含む哺乳類に感染しているため、パンデミックが生じる可能性が示されている。特に2024年には、この株が米国の複数の州において乳牛で検出され、これまで見られなかった宿主への異常で懸念される拡大が確認された。今回Thao-Quyen NguyenらはこのH5N1株が、2021年後半に北米に到達した後にどのように進化・拡散したかを調べた。Nguyenらは、地域の病原性の低い鳥インフルエンザ株との混交により生まれた100ものウイルスバリアントについて遺伝子データの解析を行った。これらのデータを、米国で感染した乳牛に由来する新たに配列決定されたゲノムおよびアウトブレイク情報と組み合わせた結果、このアウトブレイクが、おそらく2023年中・後期にテキサス州で発生した、一羽のトリからの単一のスピルオーバーイベントを起源とし、その後数ヵ月間に検出されることなくウシの間で伝播していたことが分かった。感染した、あるいは無症状の乳牛の移動により、同ウイルスがテキサス州から、ノースカロライナ、アイダホ、ミシガン、オハイオ、カンザス、サウスダコタを含む他の複数の州への急速な拡散が促進された。これらの結果によれば、鳥インフルエンザウイルスがウシに感染したのち、ウシ間の伝播が持続したのみならず、ウシから家禽、アライグマ、ネコ、さらにはクロムクドリモドキ、クロウタドリ、ハトなどの野生のトリを含む他の種へと拡散したことになる。さらに遺伝子解析から、哺乳類の適応に関連する遺伝子変異の存在が明らかにされた。これらの変異の一部は、ウイルス集団内ですでに固定されていた。Nguyenらはこう記している。「我々の研究は、[インフルエンザAウイルス]が種を越える病原体であり、規制機関同士ならびに動物健康組織および公衆衛生機関の間の協力によって、宿主の健康を高め、パンデミックリスクを低減することが必要であることを示している。」
- Journal
- Science
24-Apr-2025
「骨コレクター」の肉食毛虫は、獲物昆虫の体の一部で身を包んでクモの巣を巡回する
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
獲物の残骸をまとってクモの巣を這い回り、採餌するという生物学者がこれまで知らなかった珍しい肉食毛虫について研究者らが報告している。「骨コレクター」と呼ばれるこの珍しい新種は、ハワイのオアフ島の1つの山腹でのみ発見されている。地理的に隔離されたハワイでは、ハワイシャクトリムシ(Eupithecia spp.)のような数種の肉食毛虫など、特異的に適応した無脊椎動物が出現している。しかし、鱗翅目種の大半は草食性で、肉食毛虫は現在知られている200,000種近いガとチョウのうちの約0.1%に過ぎない。Daniel Rubinoffらは今回、新たに発見されたハワイの肉食毛虫種 ―― 骨コレクター ―― について詳述している。この毛虫は樹洞や岩の割れ目に押し込むように張られたクモの巣だけに生息している。Rubinoffらによると、骨コレクター毛虫 ―― Hyposmocoma属、ハワイだけで見られる古代の様々なガのグループのひとつ ―― は好機を逃さず的確に行動するタイプの腐肉食性捕食動物で、閉鎖的な空間に張られたクモの巣に生息し、そこに貯蔵されたクモの餌などの衰弱した昆虫や死んだ昆虫などを食べ、時には共食いもするという。更にその肉食毛虫は、昆虫の体の食べられない部位を慎重に選び出し、サイズをカットして自分の移動可能な絹のケースに合うようにし、それらでケースを入念に飾り付ける。これは宿主であるクモに見つからないようにするための不気味なカモフラージュだと考えらえる。注目すべきは、これらの毛虫は非常に珍しく、20年以上にわたる現地調査で観察されたのはわずか62個体ということである。見つけにくいこの種はハワイ最古の島より500万年も古いと考えられるが、現在はオアフ島の山林の15キロメートル四方という狭い範囲にしか生き残っていない。また、この毛虫は外来種のクモの宿主を利用するまでに適応したとはいえ、その希少さが極端であることと生息地が1ヵ所に限定されることから、侵略的捕食者や生息地喪失など、他のハワイ原産の昆虫を絶滅に追い込んでいるのと同じ多くの脅威にさらされている。的を絞った保護活動なしでは、体の一部を集める肉食毛虫の古代系統を代表する最後のこの現生生物は人知れず消えていなくなるかもしれないと、著者らは警告している。
- Journal
- Science
23-Apr-2025
ATPがパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連するタンパク質の異常凝集を防ぐ
Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate UniversityPeer-Reviewed Publication
これらの神経疾患を完全に治療する方法はまだ見つかっていませんが、科学者たちは認知機能や運動機能障害の予防と緩和を目指して、根本的な特性の解明を進めています。沖縄科学技術大学院大学(OIST)分子神経科学ユニットと細胞分子シナプス機能ユニット(2024年3月末に閉鎖)の研究チームは、この度科学誌『Science Advances』に発表された研究で、細胞の「燃料」として最も一般的に考えられている細胞内の分子ATP (アデノシン三リン酸)が、神経変性疾患において驚くべき役割を果たしていることを発見しました。
- Journal
- Science Advances
- Funder
- Japan Society for the Promotion of Science, Japan Society for the Promotion of Science, Japan Society for the Promotion of Science, Japan Society for the Promotion of Science, Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University
21-Apr-2025
世界初!エコー診断用圧電単結晶における ナノドメインの交流電圧応答を直接可視化
Kumamoto University
交流電圧を加える「交流分極」で圧電単結晶の特性が向上しますが、特性向上の鍵であるナノドメインの応答は明らかになってません。今回、熊本大学の研究において、「交流電圧印加その場電子顕微鏡法」でナノドメインの応答を可視化しました。今後、医療用画像診断装置の高性能化、ひいては医療の高度化につながる可能性があります。
- Journal
- Applied Physics Letters
- Funder
- Japan Society for the Promotion of Science
18-Apr-2025
Pharma.AI Day 2025:今すぐ登録!インシリコ・メディシンが4月24日にGen-AIプラットフォームの四半期アップデートを公開
InSilico MedicineBusiness Announcement
ケンブリッジ、マサチューセッツ州、4月18日—臨床段階の生成型人工知能(AI)創薬企業であるインシリコ・メディシン(以下、インシリコ)は、Pharma.AIの新しい四半期アップデートシリーズ「Pharma.AI Day 2025」を4月24日午前10時〜11時(米国東部時間)に開催することを発表しました。ここから登録して、インシリコ・メディシンの創設者兼CEOであるアレックス・ザボロンコフ博士とともに、一連のAIブレークスルーと新製品デモの詳細をご覧ください。
17-Apr-2025
探査車キュリオシティ、古代の火星に炭素循環があった証拠となる炭酸塩を確認
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
新しい研究によると、NASAの探査車キュリオシティが、古代の火星大気に関する隠された化学的記録を発見し、大量の二酸化炭素が火星の地殻に閉じ込められている可能性が示唆されたという。この研究結果は、古代の火星でかつて炭素循環が行われていたことを示す現場証拠であり、火星の過去の気候について新たな知見を提供するものである。火星の地形は、かつて液体の水が地表を流れていたことを明確に示しており、そのためには過去の火星は現在よりもはるかに温暖な気候でなければならない。したがって、温暖な状態を維持するために、過去の火星におけるCO2の大気は現在よりも厚かったはずだと考えられる。液体の水と大気中のCO2が豊富に存在する気候では、それらが火星の岩石と反応して、炭酸塩鉱物を生成するような惑星化学的作用が引き起こされたと予想される。しかし、以前の分析でも火星岩石から炭酸塩は検出されていたが、検出された量は惑星化学的モデルから予想される量よりも少なかった。
探査車キュリオシティのデータを用いて、Benjamin Tutoloらは、かつて古代湖があったゲール・クレーターの一部で炭酸塩鉱物を調査した。キュリオシティは2022年と2023年に、湖底から吹きさらしの環境へ移行したことを表すような、異なる層序単元から4つの岩石試料を掘削し、探査車に搭載されたX線回折計を用いてそれらの鉱物を分析した。Tutoloらは、硫酸マグネシウムに富んだ層内に、重量で約5~10%を超える高濃度の菱鉄鉱(炭酸鉄)を確認した。軌道からの測定では、これらの地層中に炭酸塩は検出されなかったため、これは予想外の結果であった。その出所と化学的性質から、著者らは、水と岩石が反応した後に水が蒸発して菱鉄鉱が形成されたと推測している。これは、CO2が火星大気から堆積岩へと化学的に隔離されたことを意味する。こういった硫酸塩層の鉱物組成が、火星中の硫酸塩に富む地域に典型的なものならば、そうした層には未確認の大きな炭素リザーバーがあることになる。炭酸塩はその後の作用で部分的に破壊されていることから、二酸化炭素の一部が後に大気中に戻り、炭素循環を形成していたことが示唆される。関連するPerspectiveではJanice BishopとMelissa Laneが、「火星周辺で行われた軌道からの調査や探査車による調査を通じて、惑星化学的な火星の詳細が明らかになるにつれ、居住できる可能性のある多様な環境について、さらなる手がかりが得られる」と述べている。
- Journal
- Science
17-Apr-2025
全世界の農地の最大17%が有毒な重金属に汚染されている、と研究が推定
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
1000件を超える地域研究のデータと機械学習を組み合わせて研究者らが導いた推定によると、14億人もの人々がヒ素やカドミウム、コバルト、クロム、銅、ニッケル、鉛などの重金属によって危険なまでに土壌が汚染された地域に暮らしている。この研究は世界規模のリスクを明らかにすると同時に、特にユーラシアの低緯度地域に、これまで認識されていなかった高リスクの金属に富んだ地帯があることも明らかにしている。クリティカルメタルの需要増大によって、有毒な重金属による土壌汚染は悪化の一途をたどる可能性が高い。著者らは、「この論文で提示した世界的な土壌汚染データが科学的警鐘として働き、政策立案者や農業従事者が世界の貴重な土壌資源をよりよく保護するために必要な対策を速やかに講じることを我々は期待している」と述べている。有毒な重金属による土壌汚染は、自然的要因と人間活動の両方によって引き起こされ、生態系や人間の健康に重大なリスクをもたらす。重金属類はひとたび土壌に入ると数十年にわたり残留する可能性がある。これらの汚染物質により、作物の収量が減少し、生物多様性が影響を受け、水資源の質が損なわれ、さらに家畜への生物蓄積によって食の安全も危険にさらされる。しかしこれまでの研究で、至るところの土壌が有毒な金属で汚染されていることが示されている一方で、その世界的な分布は依然としてあまり理解されていない。このナレッジギャップに対処するため、Deyi Houは、796,084地点の土壌サンプルを包含する1,493件の地域研究からデータを収集し、農地土壌中の毒性金属の世界的な分布を評価し、濃度が安全閾値を超過している地域を特定した。機械学習とモデリングアプローチを用いてHouらが導いた推定によると、全世界の農地の14~17% ―― およそ2億4200万ヘクタール ―― が1種類以上の有毒金属に汚染されており、最も広く分布している金属はカドミウムであり、南アジアと東アジア、中東の一部地域およびアフリカで顕著であった。ニッケル、クロム、ヒ素、コバルトもさまざまな地域で閾値を超過しており、その主な原因は自然の地質学的要因と採鉱や工業化などの人間活動が組み合わさったものだった。さらに研究結果から、ユーラシアの低緯度地域に広がる大陸横断的な「金属に富んだ回廊地帯」が明らかになった。これは古代からの採鉱、金属に富んだ岩盤の風化、および経時的に浸出が制限されたことによる累積的な影響を反映している可能性が高い。Houらはこれらのデータを世界の人口分布と重ね合わせ、9~14億人が高リスク地域に居住していると推定している。
- Journal
- Science