乱流研究の中核をなすのは、主に二つの理論体系です。一つは、コルモゴロフによる小規模乱流の普遍的枠組みで、エネルギーが次第に小さな渦へと伝播・散逸していく過程を記述します。もう一つは、生成が極めて容易でありながら、非常に複雑な挙動を示すテイラー・クエット(Taylor-Couette, TC)流れで、複雑な流れの基本的特性を研究する上での基準となります。
過去数十年にわたり、これら二つの強力な理論体系の間に存在する根本的な矛盾が、乱流研究分野の研究者を悩ませてきました。広範な実験的研究によって、コルモゴロフの枠組みがほぼすべての乱流に対して普遍的であることが確認されているにもかかわらず、 テイラー・クエット流れには明らかに適用できないとされてきたのです。
しかし今回、沖縄科学技術大学院大学(OIST)において9年をかけた実験装置「OIST-TC実験装置」を開発した研究チームが、従来の通説に反し、コルモゴロフの枠組みがテイラー・クエット流れの微小スケールに普遍的に適用されることを実証し、この矛盾を解決しました。これはまさに、理論的予測通りの結果でした。