16-Apr-2026
古代の湖があふれ出た結果、コロラド川がグランドキャニオンを流れるようになった可能性がある
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
コロラド川は、昔からずっとグランドキャニオン地域を流れていたわけではなく、約560万年前に古代の湖が氾濫した後、この地域を削りながら流れ始めた可能性がある、と研究者らは述べている。この研究結果は、地下水流や侵食などのプロセスよりも、湖の溢出が、コロラド川の現代の流路に重要な影響を及ぼしたことを示唆している。コロラド川がグランドキャニオンに統合された時期とそのメカニズム、および峡谷形成におけるその役割は、依然として不明な点が多い。地質学的証拠によれば、コロラド川は約1100万年前には現在のコロラド州西部に存在していたが、現在の流路でグランドキャニオンから流れ出るようになったのは約560万年前のことである。このように、コロラド川の初期の歴史には大きな空白期間が残されている。これまでの研究では、現在の流路への統合には、峡谷を削り河川を争奪するという、複雑で多段階にわたる歴史が関与していることが示唆されている。一つの有力な考え方として、かつて一連の閉鎖流域に大きな湖が複数あり、その湖に徐々に水がたまってあふれ出した結果、孤立した排水系がつながって連続した河川系になり、海洋に達したというものがある。ビダホチ累層などの地層はこうした古代の湖系の痕跡と解釈され、溢出仮説を後押ししているが、この結論には異論もある。
今回、John Heらは、火山灰層と砂岩に含まれるジルコン結晶に対して正確なウラン・鉛年代測定を行い、ビダホチ累層とその他のコロラド川流域における堆積物の年代と起源を調べた。こうしたジルコンの年代パターンは、堆積物源と河川のつながりを経時的に追跡する際に、「指紋」の役割を果たす。Heらは、ビダホチ累層上部におけるジルコン粒子の組成と年代分布が、既知の初期コロラド川堆積物に見られるものとよく一致することを見出した。この類似性は、堆積物源が共通していることを示唆し、ビダホチ累層上部が660万年前には既に当時のコロラド川につながっていた可能性を示している。堆積物蓄積の増加、ストロンチウム同位体比、魚類化石群といった、それ以外の地質学的証拠も、コロラド川が盆地に流れ込んで徐々にたまっていき、数十万年から100万年以上たった後に、下流へと流れ出たことを示している。さらに、古代の湖底堆積物の標高と構造からも、かつてコロラド川が流れ込んでいた湖の水位が上昇し、カイバブ・アーチを越えて峡谷地域にあふれ出したことが示唆される。著者らによると、地下水流や侵食といった他のメカニズムが補助的な役割を果たした可能性はあるが、今回の研究結果は、湖の溢出が、グランドキャニオンを通るコロラド川の流路を確立するうえで主要な過程であったことを示唆している。
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