15-Feb-2026 定例学長記者懇談会:ASPIRE「線虫を含む土壌微生物 ネットワークと植物との ホロバイオームの理解と 持続可能農業基盤の構築」プロジェクトについて Kumamoto University Grant and Award Announcement 令和8年2月4日の定例学長記者懇談会にて、大学院先端科学研究部 澤 進一郎 教授が新規に採択されたJSTのASPIREプロジェクトについて説明を行いました。本研究はフランス国立農業・食料・環境研究所(INRAE)との共同で実施されます。5年間のプロジェクトにおいて、線虫を含む植物と土壌微生物のネットワークを解析し、農業における「ホロバイオーム」理解の深化を目指します。本研究は、国際的に卓越した研究者を対象とする 「ASPIRE for Top Scientists」 の枠組みで採択されました。 プロジェクトは 2025年12月に開始予定で、最大5億円(約320万米ドル) の研究資金が支給されます。 Funder Japan Science and Technology Agency
12-Feb-2026 自律で動くロボット腕を人はどこまで自分と感じるのか Toyohashi University of Technology (TUT) Peer-Reviewed Publication 将来、AIによって自律的に動く義手が普及したとき、人はそれをどのように感じ、受け入れるのでしょうか。本研究では、バーチャルリアリティ(VR)で「自分の腕がロボット義手になった」状況を再現し、義手が自律的に動く速度が、身体所有感(自分の身体だと感じる感覚)、主体感(自分が動かしている感覚)、使いやすさ(ユーザビリティ)、そしてロボットに対する印象(有能さ・不快感など)に与える影響を調べました。その結果、義手の動きが速すぎても遅すぎても身体所有感や使いやすさが低下し、人の自然な到達動作に近い中程度の速度(動作時間約1秒)で最も良い印象が得られることが分かりました。 Journal Scientific Reports Funder Murata Science Foundation, MEXT, Murata Science and Education Foundation, JST Establishment of University Fellowships towards the Creation of Science Technology Innovation
12-Feb-2026 長江では禁漁により70年にわたる淡水生物多様性の減少が止まる American Association for the Advancement of Science (AAAS) Peer-Reviewed Publication 数十年にわたり生態系が衰退していた中国の長江は、商業漁業が全面的に10年間禁止されたことにより、回復の初期兆候を示していると、研究者らは報告している。研究結果によれば、魚類の生物量は2倍以上になり、絶滅危惧種は回復しつつあるなど、世界最大の河川システムの生態系が慎重ながら復活し始めている可能性があるという。1950年代以降、中国が急速に経済発展した結果、同国で最大かつ最長の河川である長江では淡水生物多様性が大幅に減少した。これは主に数十年にわたる乱獲と生息環境悪化によるものであった。保全への大規模投資と水質改善にもかかわらず、生物多様性は失われ続け、従来の回復活動の有効性に疑問が投げかけられていた。これを受けて、2021年、中国は長江全流域で前例のない10年間の禁漁を実施するとともに、厳格な取り締まりと包括的な環境管理を実施した。 今回、Fangyuan Xiongはこうした政策介入の成果について評価を行っている。Xiongらは長江に生息する魚類群集を禁漁前後で評価するため、2018年から2023年のデータを用いて魚類の生物量、身体状態、種の多様性、および絶滅危惧種の有無を比較した。研究結果によると、禁漁の実施後、長江は生態回復の初期兆候を示しており、魚類の生物量は2倍以上になり、種の豊富さはやや増加した。回復が特に顕著だったのは体が大型で高い栄養段階にある種であり、そうした種は以前よりも個体数が増え、健康状態も向上していた。さらに、数種の絶滅危惧種および回遊種、ならびに近絶滅種であるヨウスコウスナメリも個体数が回復している。改善の最も重要な単一要因として禁漁が浮上したが、水質改善、流況調整、土地利用管理といった補完的措置も重要な役割を果たした。総合すると、本研究結果によって大規模な禁漁が迅速な生態改善を促進し得ることは示されたものの、生物多様性の回復が続くか否かは、継続的かつ統合的な流域管理を行って、河川システムに対する人間のあらゆる圧力に対処できるかどうかにかかっている。「本研究で報告した成果は……地球規模で生物多様性が減少している時代において、大規模な回復活動を支援するような野心的な政策決定が、過去の生態系被害を逆転させ、より明るい未来をもたらし得るという希望を与える……」と、Xiongらは述べている。 Journal Science
12-Feb-2026 ゲノムから情報を得た育種方法でアメリカグリの復活を加速できる American Association for the Advancement of Science (AAAS) Peer-Reviewed Publication 致死的な胴枯病で100年以上も壊滅状態にあった伝説的なアメリカグリの木が、新しいゲノム技術と慎重に育てた交雑種のおかげで、絶滅の淵から復活する可能性があることが新しい研究で判明した。その研究で実施された実験で、平均70~85%をアメリカグリの系統を使って樹木を育種すると、結果的に胴枯病と根腐れに対してかなりの抵抗性を持つ樹木になることが示された。アメリカグリの枯死は、外来の病気が固有種をいかに急激に壊滅させるかを示す最も顕著な例の一つである。クリ胴枯病の原因であるネクロトロフ菌は、19世紀後半にアジアのクリに付着して北米に持ち込まれた。数十年のうちに数十億ものアメリカグリが枯死し、かつてはメイン州からミシシッピ州にかけての森の優占種であったこの樹木は消滅した。現在、この種は機能的絶滅種と広く認識されている。アメリカグリ復活の取組みは、病害に強い樹木の育種も含め、1世紀以上続いている。自立再生するアメリカグリ個体群の回復に、中国グリの抵抗性対立遺伝子の遺伝子導入が寄与してきたものの、胴枯病抵抗性の遺伝的構造が複雑で不明点も多いことから進行は遅れている。 このギャップに対処しようと、Jared Westbrookらは交雑育種プログラムにおいて3つの重要な創始種となるクリの染色体スケールのゲノムアセンブリを作成した。高度にアノテーションされたこれらの参照ゲノムを比較し、Westbrookらは、大半の蛋白質コード遺伝子が種にわたって共有されており、コピー数多型(CNV)が中国グリの胴枯病耐性に寄与していると考えられることを発見した。さらにRNAシーケンシングでは、アメリカグリと中国グリでは胴枯病感染に対する反応が大きく異なることも示された。また、代謝産物プロファイリングでは、中国グリは菌の成長を抑制する化合物を高濃度で持っていることが判明し、これらの代謝産物を強化することでアメリカグリの抵抗性を向上できることが示唆された。こういった複雑さを考慮し、Westbrookらは、戻し交雑育種法を通じて抵抗性を持つ交雑種を作る際には循環選抜と多世代にわたる交雑がより有効だと考えられると主張している。「長期現場試験での樹木育種プログラムで、遺伝的獲得量を評価することが重要」とJared Westbrookは特筆している。「理想としては、局所環境の影響と形質に対する遺伝的影響を分けるために個々の家系を複数の現場に植えるべきである。」関係するPerspectiveでは、Steven StraussとGancho Slavovが本研究について更に詳しく論じている。 Journal Science
10-Feb-2026 第4回プロジェクトCHANGE 年次シンポジウムのお知らせ Innovation Center of NanoMedicine Meeting Announcement 文部科学省・科学技術振興機構の国家プロジェクト COI-NEXT 川崎拠点(プロジェクトCHANGE)では、第4回年次シンポジウムを3月5日午後1時半~5時10分(日本時間)に川崎市産業振興会館で開催します。本イベントはオンラインでも配信しますのでご覧ください。 Funder Japan Science and Technology Agency
10-Feb-2026 】「水の同位体」を用いて地球の水循環を精密に可視化――国際モデル比較プロジェクト WisoMIP による世界初の標準化解析―― Institute of Industrial Science, The University of Tokyo Peer-Reviewed Publication 東京大学 生産技術研究所の芳村 圭 教授、奉 協力研究員、コクワン特任助教、千葉大学環境リモートセンシング研究センターの岡崎 淳史 准教授、中央大学の李 一帆 助教、気象庁気象研究所の田上 雅浩 主任研究員らが参画する国際研究チームは、大気中の水循環を探る気候モデルの各開発者と連携した大型国際プロジェクトを進め、世界で初めて、同一条件で8つの気候モデルの比較に成功しました。 その結果、個々のモデルよりも複数のモデルの平均が観測と最もよく一致することが判明しました。 本成果は、地球の水循環過程の理解を深化させ、気候変動予測・古気候復元・衛星観測の高度化のための基盤データとしての活用が期待されます。
10-Feb-2026 自然に“意思”を感じる人は自然とのつながりを重視? 日本人の価値観を分析 Yokohama National University Peer-Reviewed Publication 横浜国立大学大学院環境情報研究院 中䑓亮介 講師、北海道武蔵女子大学 舘石和香葉 助教、北陸先端科学技術大学院大学 中分遥 准教授、國學院大學 藤井修平 助教、同志社大学文化情報学部 柴﨑祥太 助教の研究グループは、人々が自然の三つの価値(道具的価値・内在的価値・関係価値)をどのように捉えているのか、そしてそれらがアニミズム的思考・擬人化傾向・人間中心主義的な思考など伝統的な世界観とどのように関連しているのかを明らかにしました。 Journal Current Research in Ecological and Social Psychology Funder Research Institute for Humanity and Nature, Asahi Glass Foundation
9-Feb-2026 高精度な低温シリカガラス3Dプリンティング技術を開発 Yokohama National University Peer-Reviewed Publication 横浜国立大学の向井理特任助教および丸尾昭二教授の研究グループは、高温焼結工程を必要としないシリカガラスの3Dプリンティング技術を開発しました。本研究では、有機–無機ハイブリッド樹脂であるPOSS(シルセスキオキサン)を用いることで、従来のガラス3Dプリンティングで必要とされてきた1000℃以上の高温焼結を不要とし、約650–700℃という低温焼成で透明なシリカガラス構造体を得ることに成功しました。 Journal Polymers Funder Japan Science and Technology Agency
5-Feb-2026 都市規模の距離で量子セキュアなインターネット構築への大きな一歩を実証 American Association for the Advancement of Science (AAAS) Peer-Reviewed Publication 量子セキュアなインターネットの構築に向けた重大な一歩となる、100 kmにわたる光ファイバーでの装置無依存量子鍵配送を研究者らが実証した。この結果は、大都市規模――これまでの取り組みをはるかに超える長距離――での、この方法による暗号セキュリティが保証可能であることを示しており、量子ネットワークの原理検証実験と現実世界への適用とのギャップを埋めるものである。量子鍵配送(QKD)は、量子技術の最有力な適用の1つであり、極めて安全なデジタル通信を可能にする。初期のQKDは、信頼できる装置を使用して安全を確立するが、技術的な限界と脆弱性の問題がある。より高度なアプローチである装置無依存QKD(DI-QKD)は、基本的な量子現象(ベルの不等式の破れ)から直接その安全が得られ、量子装置の内部機能の信頼を必要としない。ただしDI-QKAは要求が非常に厳しく、質の高い量子もつれの生成と長距離での効率的な検出を必要とする。これまでDI-QKDは、実験室ベースの原理検証実験において短距離でしか実証されていなかった。今回Bo-Wei Luらは、100 kmの光ファイバーで結ばれた量子もつれ状態にある2つの原子間でのDI-QKDの実現を報告している。単一光子干渉、低損失通信波長への量子周波数変換、ノイズ抑制光子放出といった高度な技術を組み合わせることによって、Luらは長距離にわたる忠実度の高い量子もつれの配送に成功し、有限データで11 kmにわたる証明可能安全な量子鍵の生成を達成、さらに100 kmでも正の鍵レートが可能であることを示した。著者らによると、今回の成果はDI-QKDの距離をこれまでに実証されていた距離と比較して2桁以上延長したことになる。 Journal Science
5-Feb-2026 毒性の増加傾向が世界的な農薬削減の取り組みの進展を妨げる American Association for the Advancement of Science (AAAS) Peer-Reviewed Publication 最近の国連において、2030年までに農薬の使用量とリスクを半減させるという目標が設定されたにもかかわらず、世界中で、農薬の総毒性および生態系への害が増加している。本研究結果は、毒性で重み付けをした農薬使用の世界基準を確立するとともに、生物多様性に最も大きな影響を及ぼす農薬、作物、および国の組み合わせを特定するものである。農薬の広範な使用により、世界の生物多様性に対する脅威が増大している。この問題に対処するため、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、2030年までに農薬の使用量とリスクを半減させるという目標を設定し、このほど新たな世界的指標である「総施用毒性(TAT)」を採用した。TATを用いれば、農薬の使用量だけでなく、各化学物質が生物にどれほど有害であるかを把握できる。しかしながら、農薬の毒性は非標的種ごとに大きく異なるため、これまでの地球規模の研究では限られた種類の農薬や種に注目するか、使用量のみに依存していた。こうした研究は通常、毒性に大きな違いがあることを見過ごしていた。その結果、農薬が生物多様性に及ぼす脅威の真の範囲や、国連の目標達成に向けた進展状況は依然として不明である。Jakob WolframらはTATアプローチを用いて、農薬が生態系に及ぼす害を測定する世界共通の手法を開発した。Wolframらは単一国の基準に依存するのではなく、世界の主要な7つの規制当局から、種群および農薬ごとの平均的な規制上の安全基準値を採用することで、その結果が世界の状況を反映するようにした。著者らはこの毒性基準で農薬の総使用量に重み付けをすることにより、625種類の農薬が幅広い種に及ぼすリスクを把握することのできる、単一の包括的指標を作成した。本研究結果によって、世界中で農薬の生態毒性が全般的に上昇しており、多くの国、作物、種群で増加傾向が見られることが明らかになった。全体として、TATはごく少数の高毒性化学物質に独占されており、果物、野菜、トウモロコシ、大豆、穀物、米が世界の農薬毒性の76~83%を占めている。さらに、中国、ブラジル、米国、インドが合わせて世界のTATの53~68%に関与している。Wolframらによると本研究結果は、根本的な変革を行わない限り、ほとんどの国が国連の農薬削減目標を達成できないことを実証しているという。 Journal Science