3-Sep-2026
山頂で緑化が進む一方で、高山に特化した種が犠牲になっている
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
欧州の山頂に生える植物群落を対象とした20年間にわたる調査によると、欧州の山頂では、気候温暖化に伴って植物種が増加している可能性があるが、見かけ上の生物多様性が増加していることによって、相次ぐ局所的絶滅が目立たなくなっているという。こうした消失は、激しい温暖化にさらされた種ほど著しく、それに先立って個体数が減少する可能性がある。このことは、将来における高山植物の絶滅に対して、植物被覆の縮小が早期警告となりうることを示唆している。気候温暖化により、山地植物の分布範囲が変化している。その結果、植物は標高の低い所から高い所へ向かって拡大し、ここ数十年で、標高の高い山岳地帯における植物種が増加している。しかし、こうして見かけ上の種の豊富さが増加することで、もともと高地に特化して生息していた種の減少や消滅が覆い隠されてしまうおそれがある。過去の研究では、こうした高山の植物群落には、気候に対する「勝者」と「敗者」の両方が含まれており、特に高地の種は温暖化に対して脆弱であることが示されている。しかし、個体数の減少が、どの程度、局所的または広範な絶滅の前兆となるかは明らかになっていない。
Johannes Wessleyらは、GLORIAネットワークを活用して、欧州の16の山岳地域にある62の山頂における植物群落を対象に、2001~2022年にかけて永久調査区における植物の存在と個体数を記録する調査を4回行った。GLORIA(Global Observation Research Initiative in Alpine Environments)とは、気候が山頂の植物相に及ぼす影響を調べるための、最大規模の体系的モニタリング・プログラムである。Wessleyらは、調査の間に姿を消した種を探し、その局所的な消失が、温暖化や、それまでの植物個体数の減少、あるいは通常の分布標高域の上限付近に生息する種と関連しているかどうかを調べた。その結果、局所的な絶滅は時間とともに増加し、温暖化が激しい山岳地域ほど多いことが分かった。特に影響を受けやすいのは、分布標高域の下端付近に生息する種や、著しい好熱化(高温に適応した種の割合が増える現象)を経験している植物群落であった。著者らは、上方への移動によって山頂での種の豊かさは局所的に増加したものの、高地の種が失われるという代償を伴い、将来的には「絶滅の負債」を生むおそれがあると主張している。重要な点として、多くの局所的絶滅に先立って種の豊富さの減少が起こっていることから、植物被覆の減少が、差し迫った消失の早期警告となりうることが示唆される、とWessleyらは指摘している。
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